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シェアリングエコノミーで解決する自治体課題に関する調査研究

[2020年3月31日]

報告書について

調査研究の成果をまとめた報告書については、右側のリンクからご覧いただけます。

調査研究の概要

調査研究の背景と目的

 自治体は少子高齢化や人口減少などの課題に、限られた財源や人的資源で対応しなければなりません。更に住民のニーズも多様化・複雑化し、従来までの公共サービス維持が困難となる可能性があります。
 このような状況において、自治体課題の解決や地域経済の活性化の一つの手段として注目されているのがシェアリングエコノミーです。
 本調査研究は、多摩・島しょ地域自治体が自治体課題の解決手段の一つにシェアリングエコノミーを加えられるような情報や視点を提供することを目的として実施しました。

シェアリングエコノミーの概要

シェアリングエコノミーの定義と基本構造

 本調査研究では、「シェアリングエコノミーとは、個人等が保有する活用可能な資産等(スキルや時間等の無形のものを含む。)を、インターネット上のマッチングプラットフォームを介して他の個人等も利用可能とする経済活性化活動」と定義しました。
 シェアリングエコノミーは下図のように、シェア事業者が提供するインターネット上のプラットフォームを通じた不特定多数の個人間での取引が基本です。

シェアリングエコノミーの基本構造

         ▲シェアリングエコノミーの基本構造

自治体課題及び対応するシェアサービス

 シェアリングエコノミーは、シェアする対象によって空間、移動、スキル、モノ、カネのシェアと5つの領域に分類され、自治体課題の解決手段として各領域のシェアサービスを活用できる可能性があります。
 国などの環境整備や、全国の自治体の動向を踏まえると、多摩・島しょ地域においてもシェアリングエコノミーが自治体課題の解決手段の一つとなる可能性は十分にあると考えられます。
自治体課題及び対応するシェアサービス例
分野  解決したい課題対応するシェアサービス例 
 雇用創出若者、女性に向けた地域での新しい仕事づくり スキルシェア
 男女共同参画女性が働きやすい環境づくり 時間シェア
 社会福祉子育てしやすい環境づくり 時間シェア、スキルシェア
 公共交通過疎地域での交通交通の代替となる手段、観光客向けの新たな移動手段の創出 ライドシェア、カーシェアなど
 観光振興観光ガイド、観光体験プログラムによる観光業の活性化など 時間シェア、ホームシェアなど
 公的不動産活用自治体が保有する低未利用施設の利活用による稼ぐ公共施設への転換 スペースシェア
 民間資産活用空き家、空き店舗、空きビル等の利活用による民間不動産の活性化 スペースシェア
 教育生涯教育 スキルシェア
 農林水産農林水産資源を生かしたグリーンツーリズムの開発 時間シェアなど
 災害対策災害時の緊急支援手段の確保 ホームシェア、カーシェア
 自主財源の確保特定の地域課題解決に必要となる資金を、従来とは異なる手段で調達 クラウドファンディング

多摩・島しょ地域自治体における自治体課題とシェアリングエコノミーの現状

 自治体アンケート及び住民アンケート結果から、多摩・島しょ地域の現状として、自治体及び住民とも課題や困りごとの解決にシェアリングエコノミーを活用する認識が一般的ではないことが明らかとなりました。

自治体アンケート結果

  • 多摩地域が優先する上位の課題は、社会福祉(子育て支援)、自主財源の確保
  • 島しょ地域が優先する上位の課題は、災害対策、観光振興
  • 97.4%の自治体がシェアリングエコノミーを認知
  • 実施や検討している自治体は41.0%
  • 実施・利用意向の多いシェアサービスは、シェアサイクル、クラウドファンディング
多摩・島しょ地域自治体のシェアリングエコノミー実施・検討状況

         ▲多摩・島しょ地域自治体のシェアリングエコノミーの実施・検討状況

住民アンケート結果

  • やりたいことや困りごとの上位は、「空き時間や得意な知識などを使って収入を得たい」
  • シェアリングエコノミーという言葉は知っているが内容はよくわからない割合が約8割
  • シェアサービスの利用経験がある割合は約3割
  • 事故やトラブル発生時や面識のない相手とのやり取りを不安に感じている

先進事例等におけるインタビュー調査結果

シェアリングエコノミーがもたらす効果

 有識者や先進自治体等におけるインタビュー調査結果から、自治体課題の解決策としてシェアリングエコノミーがもたらす効果は、主に以下の3つであることが明らかとなりました。

  • 新たなサービスや雇用創出につながることで、地域経済の底上げが期待できる
  • 住民や外部の力を活用して、既存公共サービスを補完・向上(上乗せ)できる
  • 住民が主役となるため、地域や社会への関心・関与が高まる
先進事例等におけるインタビュー調査結果概要
1.シェアリングエコノミー伝道師 加藤 遼 氏 
自治体におけるシェアリングエコノミーの活用について
 2.佐賀県多久市
仕事をしたくても育児や介護で働くことができる時間や場所が限られる住民に対し、クラウドソーシングで新たな就業機会を創出
 3.佐賀県
複数の子育てシェアサービスを活用し、利用したいときに利用できる子育て支援サービスを提供
 4.京都府京丹後市
住民・観光客の移動の自由を確保するために公共交通に関する複数の取組を実施し、それでも生じる交通空白地の解消に公共交通空白地有償運送の制度を活用
高齢者などスマートフォンやクレジットカードの利用を困難に感じる方も利用可能な体制を整備
5. 埼玉県横瀬町
スペースシェアとスキルシェアを活用することで、町の知名度が向上し交流人口が拡大
 6.東京都日野市
スキルシェアを活用し、多世代の交流及び住民同士の困りごとを解決する仕組みを構築

シェアリングエコノミーを活用する際の留意点

 シェアリングエコノミーを活用する際には、以下の点について留意する必要があります。

  • 課題の明確化
  • 法令適合性の確認
  • 住民への普及啓発
  • 住民不安の払しょく

多摩・島しょ地域における自治体課題の解決手法としてのシェアリングエコノミー

多摩・島しょ地域自治体が優先する上位の課題及び対応するシェアサービス例

 多摩・島しょ地域自治体が優先する上位の課題と、それに対応するシェアサービス例を以下のとおりまとめました。
 クラウドファンディングは、既に多摩・島しょ地域の多くの自治体で実施されている手法ですが、スキルシェア、時間シェア、ホームシェアなどを実施している自治体は少なく、今後、新たな手段としてシェアリングエコノミーの活用が検討されれば、多摩・島しょ地域自治体が優先する課題の解決手段が一つ増えると考えられます。

多摩地域自治体の優先する課題と対応するシェアサービス例
優先する課題 対応するシェアサービス例 
 社会福祉(子育て支援) 時間シェア、スキルシェア
 自主財源の確保 クラウドファンディング(ガバメントクラウドファンディング)
島しょ地域自治体の優先する課題と対応するシェアサービス例
優先する課題 対応するシェアサービス例 
 災害対策 ホームシェア、カーシェア
 観光振興 ホームシェア、スペースシェア、時間シェア、スキルシェア        

シェアリングエコノミーを取り入れた課題解決手段の検討手順

 自治体が課題解決手段を検討するにあたって、手順1で複数の手段を検討した結果、課題解決に最適な手法としてシェアリングエコノミーが選定された場合には、手順2のポイントを確認していきます。

【手順1 課題とその解決手段の検討】
(1) 課題の明確化
(2) 課題解決の手段を検討

【手順2 シェアリングエコノミーを活用する場合に検討するポイント】
(1) 法令適合性の確認
(2) シェア事業者選定
(3) 住民への普及啓発

シェアリングエコノミーは地域の課題解決に向けた新たな選択肢

 多摩・島しょ地域においても、それぞれの自治体が置かれた状況に応じて課題解決や地域活性化に向けてシェアリングエコノミーを活用する余地は十分にあると言えます。

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問合せ

公益財団法人 東京市町村自治調査会 企画調査部 調査課

電話: 042-382-7722 ファックス: 042-384-6057

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