報告書について
調査研究の成果をまとめた報告書については、右側のリンクからご覧いただけます。
調査研究の概要
1 調査の背景・目的
国による働き方改革の一環として副業・兼業の促進が図られる中、公務員による副業・兼業を後押しする動きも見られ始めています。
本調査研究では、公務員の副業・兼業が「地域の担い手不足」と「自治体における人材育成」を同時に解決できる可能性に着目し、職員・行政・地域それぞれの側面から分析・検討を行いました。
また、地域類型ごとの分析を行い、公務員の副業・兼業のあり方とその効果的な促進策について提案することを目的として実施しました。
2 公務員における副業・兼業の現状と課題
- 法律上、営利企業等の従事が制限されています(任命権者の許可が必要)。
- 国家公務員における兼業許可基準については、2019年3月に政府から通知が出され、兼業先、時間数や報酬等について一定の明確化がなされています。
- 地方公務員においては、副業・兼業の基準を明確化して奨励する事例が広がりつつあるほか、兼業を前提とした外部人材のキャリア採用を行う事例も見られ始めています。
- 職員数が減少する中、住民ニーズに的確に応えていくため、多摩・島しょ地域自治体においても人材戦略のひとつとして副業・兼業の活用を検討する必要があります。
3 副業・兼業における事例分析
- 先進事例を分類すると「スキルアップ型」(都市部)と「地域貢献型」(郊外部)に分けられますが、いずれも職員の成長・意欲向上を重視する方向にシフトしてきています。
副業・兼業の制度類型類型 | 地域 | 主な狙い | 主な活動エリア | 代表事例 |
---|
スキルアップ型 | 都市部 | 職員のスキルアップ | 地域を限定せず | 神戸市・生駒市 |
地域貢献型 | 郊外部 | 地域の発展・活性化 | 自地域内 | 新富町 |
- 地域・議会の否定的な反応は想定よりも少なく、比較的好意的に受け止められています。
- 前例がないため、まずやってみて、状況を見ながら基準をつくるスタンスです。
- 副業・兼業を前提とした民間人材の採用活動を推進する事例が見られ始めており、いずれも数百人規模の応募を集めています。
- 先進事例の人材育成、人材確保に向けた副業・兼業の取組を参考に、多摩・島しょ地域自治体も職員の成長を図り、サービスや生産性の向上等につなげていく必要があります。
<副業・兼業に関する先進事例一覧(2020年1月現在)>
4 多摩・島しょ地域における現状と課題
自治体アンケート
- 自治体により副業・兼業の捉え方・運用がさまざまであり、件数にもばらつきがあります。
- 奨励・支援しているのは1団体のみです。人材育成や人材確保に対する危機感を強めることが必要です。
<首長により認められた副業・兼業の件数(N=39・SA)>
<人材確保策としての副業・兼業の可能性(N=39・MA)>
職員アンケート
- 副業・兼業に意欲的な意見が約5割。内容も多岐に渡り、若手ほど意欲的な傾向があります。
- 副業・兼業を行う上での第一の障害は「処罰の恐れ」。制度化し基準の統一・明確化が重要です。
<副業・兼業の今後の活動意向別割合(N=908・SA)>
住民アンケート
- 自治体職員の副業に対して肯定的な意見が過半を占め、その条件も寛容な傾向があります。
- 地域住民においても、副業による「職員の成長」に対する期待は高いです。
<市町村の職員が副業をすることに対する考え方(年齢階層別)(N=624・SA)>
<市町村の職員が副業・兼業をすることで期待できること(N=624・MA)>
5 多摩・島しょ地域における公務員の副業・兼業のあり方
これからの多摩・島しょ地域における公務員の副業・兼業のあり方について、次のとおり提言します。
おわりに
時代の流れを積極的かつ先取的に捉えて、社会貢献の側面だけでなく、職員のスキルアップ、人材戦略、地域貢献を好循環させ、相乗効果を発揮することで、地域としての経営力を高めていく視点を持つことが重要です。