報告書について
調査研究の成果をまとめた報告書については、右側のリンクからご覧いただけます。
調査研究の概要
調査研究の背景目的等
- ケアラーは、介護の中で心身の健康を害したり社会的に孤立してしまうなど、一人一人の状況により多様な日々の問題を抱えている。
- 特にケアラーが学齢期の子どもの場合、発達段階にある心身への影響はもとより遅刻、早退や欠席による勉強の遅れや不登校など学業への阻害要因となり、将来の進路への影響も懸念される。
- 全年代的にみても、介護等の負担から就業への影響や生活が困窮する場合もあり、ケアラーに対する自治体の支援の重要性が高まっている。
上記を踏まえ、本調査研究は、自治体におけるケアラー支援のあり方(支援方策・支援体制など)を示すことを目的に実施した。
ケアラー/ヤングケアラーとは
本調査におけるケアラー/ヤングケアラーの定義は、対象となるケアの内容やケアラーの対象年齢を具体的に示しており、曖昧さが少ないものと考えられる日本ケアラー連盟の定義と同一のものとした。
<用語の定義>
現状把握等(自治体・社会福祉協議会・都内在住のケアラーアンケートより)
自治体アンケート
- ヤングケアラーやケアラーに対する支援を実施していると回答した自治体は39 自治体中24 自治体であった。
- 施策は、「相談窓口の設置」、「集いの場(当事者同士の相談・語らいの場)を設置」を行っていると回答した自治体が18 自治体であった。
- ケアラー支援の課題は、「支援ニーズの把握が困難である」、「支援ニーズが多様であり、対応が難しい」の回答割合が最も高かった。
<ケアラー支援の課題(複数回答)>
社会福祉協議会アンケート
- ヤングケアラーやケアラーに対する支援を実施していると回答した社会福祉協議会はアンケートに回答のあった29 団体中11 団体であった。
- ケアラーを見つける(把握する)ための工夫は、「職員に対する周知啓発」、「地域活動への参加等の関係づくり」、「広報活動への注力」の回答割合が最も高かった。
<ケアラーを見つける(把握する)ための工夫(複数回答)>
都内在住のケアラーアンケート
- ケアの内容は、家事、身体的介護、外出の付き添い、病院の付き添い、感情面のサポート、見守り等多岐にわたる。
- ケアによる心身の健康状態への影響は、最も回答割合が高いのは「影響はない」(39.8%)であったが、残りの約6割の人は何かしらの不調を抱えている。
- 行政や支援団体、社会へ期待することは、「ケアについて相談できる窓口の充実」、「利用できる制度等についての案内の充実」、「経済的な支援」、「ケアを必要とする人へのサービスや制度の充実」がいずれも4割を超えている。
<行政や支援団体、社会に期待する支援や変化(複数回答)>
先進事例の取組
全国でケアラー支援に取り組む先進的な自治体・団体を自治体の人口規模や面積、取組体制等の観点で、多様な事例を取り上げられるよう留意し調査を行った。
- ヒアリングの結果、自治体と社会福祉協議会等の中間団体が適切な役割分担を行い、きめ細やかなアウトリーチ活動を行いつつ、多機関連携等によって多様なケアラーを適切な支援に継続してつなげることの重要性が示唆された。
- ケアラー支援にあたっては、ケアラー本人の意向を尊重することが大切であることや、潜在的にケアの負担を抱えている人へアプローチすることの難しさが明らかになった。
<先進事例の対象自治体・団体およびその特色>
提言
ケアラーや自治体の現状と課題を踏まえ、ケアラー支援を充実させていくための具体的取組を以下のとおりまとめた。
<現状と課題を踏まえたケアラー支援の具体的取組とその要点>
- 具体的取組は、自治体内での複数部署の連携はもとより、社協等の中間団体とも連携し、それぞれの地域特性に合った体制を構築し実施することが重要となる。
- 各施策は、計画を立案し実施した後、ケアラーの負担軽減につながっているか等の観点から効果検証を行い、取組内容の改善を行っていくことが求められる。