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自治体における効果的な情報発信媒体に関する調査研究

[2021年3月31日]

報告書について

調査研究の成果をまとめた報告書については、右側のリンクからご覧いただけます。

調査研究の概要

調査研究の背景と目的

  情報のデジタル化によって、住民が情報を受け取る手段の選択肢は広がっています。年齢やライフスタイル等の属性によって関心のある情報や利用する媒体は異なり、さらに関心のある情報の分野によっても情報を受け取る手段が異なることもあると考えられます。自治体からの情報発信においても、デジタル媒体の活用により、即時性や利便性が向上する一方で、従来の情報発信方法では、必要な情報を必要な住民に届けられないという事態が起こることも考えられます。

 本調査研究は、アナログ、デジタル問わず自治体が情報発信に利用する各媒体の特性や先進的な取組等を整理するとともに、住民アンケート等からさまざまな属性を持つ住民それぞれのニーズを明らかにすることによって、多摩・島しょ地域の自治体が情報発信媒体を効果的に選択したり、活用したりする際の参考となることを目的として実施しました。


自治体の情報発信を取り巻く状況

●情報通信機器の世帯保有率の構成は近年大きく変化しており、スマートフォンやタブレット端末の保有率は増加傾向で推移。

●インターネット普及やICT の発展により、日常生活の中で情報発信のデジタル化が大きく進展。ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)等のアプリケーション・サービスの利用があらゆる世代で浸透。

主要SNS・アプリ等の国内利用率
●都内自治体のSNS の活用状況は、全区市町村においてはTwitter が最も多く91.9%、次いでFacebookとYouTubeがともに72.6%、Instagram が30.6%、LINEが25.8%。
 多摩・島しょ地域ではTwitter の活用率は約9割にのぼる一方、FacebookやYouTube の活用率においては区部に比べ30ポイント近く低い結果になりました。
都内自治体別SNS活用状況
●全国の自治体広報紙の配布方法は、自治会・町内会(区長等も含む)が最も多く7割超。
 一方で、新聞折り込みはわずかながら減少傾向がみられます。これは新聞購読者数の減少が関係していると考えられます。

多摩・島しょ地域における自治体情報発信の課題

 アンケート等から、多摩島しょ地域における自治体情報発信の課題を次のようにまとめました。

(1)現行の情報発信手段における伝達力の限界

 住民側では、若い世代は自治体情報に触れる機会が乏しく、情報が住民の手元までリーチできていない点、また読み手に必要な情報と認識されていない点が課題です。自治体側は、広報紙の配布方法の8割がポスティングですが、費用が高額になることや配布業者の確保の難しさなどに不安があります。
 また、SNS で積極的に情報発信しているものの、登録者数の伸び悩みの声も聞かれます。自治体によるTwitter の活用は9割近くにのぼる一方、公式Twitter から情報を受け取った住民は5.1%にとどまっています。

(2)新たな媒体の登場に対する庁内広報体制の対応

 デジタルによる情報発信の魅力は即時性と情報拡散性ですが、紙媒体を想定した決裁ルールでは、迅速な発信・回答ができない可能性があります。SNS は安価に情報を広められる反面、インターネット上のトラブルのリスクもあり、公的立場のSNS運用は注意とスキルを要します。
 また、広報部署の人員不足を感じている自治体が半数を超えており、新しい情報発信媒体の導入は業務負担が増し、積極的にはなりにくい状況だと考えられます。

(3)情報を受け取る側の情報格差や社会インフラ

 高齢者の中にはSNS を日常的に使いこなす人もいれば、強い抵抗感をもつ人もいて、情報通信機器に対するリテラシーは二極化しています。デジタル化に対し、セキュリティ面の不安を感じている人も少なくありません。多くの人は不安を認めつつ利便性が勝っている状態です。
 緊急時は即時性に優れるデジタル媒体に期待される反面、情報通信網が寸断された場面では情報発信手段が絶たれるリスクがあります。

(4)広報行政が抱える評価方法の難しさ

 広報部署が関与できない外部要因が複雑に絡み合い成果に帰結するため、因果関係の説明は難しく、また、厳格な広報事業の評価は作業自体が負担であり、広報活動の妨げになるという声も聞かれますが、目標と現状とのズレを把握する手段を持ち合わせていないと住民不在の広報となり、住民の広報離れの原因となる可能性もあります。

ヒアリング調査

 先進的な取組をしている自治体や関係事業者にヒアリング調査を実施しました。

ヒアリング調査一覧

ヒアリング対象団体

ポイント

広島県呉市

広報紙において市内で頑張っている若者を記事に取り上げ、インタビュー動画と連携させている

奈良県生駒市

地元フリーペーパー、百貨店、薬局など市役所以外の施設等を活用した情報発信を行っている

千葉県千葉市

自治体が持っている個人情報を有効に活用し、住民一人ひとりに合ったサービスの通知に取り組んでいる

東京都渋谷区

広報紙、SNSなど、アナログ・デジタル問わずさまざまな媒体を活用して住民に情報を発信している

東京都杉並区

広報戦略を策定し、広報専門監とともに全庁で情報発信に取り組んでいる

東京都三鷹市

デジタル社会を見据えたビジョンを策定し、情報のデジタル化に対する取組を検討している

株式会社ホープ

スマートフォンでの閲覧に適した電子版広報紙を掲載するサービスを展開している

LINE株式会社

住民があらかじめ登録した分野の情報を届けることができる自治体向けアカウントを提供している

課題解決のための取組

 課題を解決するための取組を、以下のように提案しました。

広報の目的やターゲットに即した情報発信媒体のベストミックス

 媒体の特性を理解した上で、対象や情報の種類に合わせて媒体を選択したり、連携させたりすることや、住民により身近なものであれば外部の媒体やツールも利用することなど、自治体の情報発信における各種媒体の望ましい組合せを「ベストミックス」としてそのイメージを提示しました。

ベストミックスのイメージ

新たな媒体の特性を活かせる庁内体制づくり

 デジタル媒体に適した業務フローに見直すとともに、運用リスク対策としてガイドライン・マニュアルの作成や職員に対する利用可能なメディアの周知、浸透の取組を提示しました。


情報が伝わりにくい住民へのサポート

 高齢者に向けた教育・サポート、障害者の異なるニーズに応じたマルチソースの確保や民間団体と連携した外国人への情報支援等の取組を提示しました。


適切な事業評価と改善のマネジメントサイクルによる情報発信の効率化

 最終的な結果だけに着目するのではなく情報伝達の各段階に着目した効果測定やSNS等の容易に取得できるデータの活用、情報発信業務の標準化及び運用スキルの向上等の取組を提示しました。


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問合せ

公益財団法人 東京市町村自治調査会 企画調査部 調査課

電話: 042-382-7722 ファックス: 042-384-6057

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