ひきこもり状態になる原因は多様で、子どもから高齢者まで幅広い年代で起きており、内閣府調査では、15歳から64歳までのひきこもり状態にある方は100万人を超えると推計されている。
ひきこもり状態にある方の中には、親も本人も高齢化する「8050問題」や貧困、病気、家族関係や就労など複雑に絡み合ったケースも見られ、住民に身近な存在である基礎自治体が支援の中心的役割を担うことが期待されている。
※多摩・島しょ地域39市町村から回答
※東京都若者社会参加応援事業に登録している団体のうち13団体から回答
先進的な取組を行っている自治体に次の内容をヒアリングした。
江戸川区 | 日野市 | 守山市 | 総社市 | 文京区 | 瀬戸内町 | 新宮・ 東牟婁圏域 | |
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専門部署の設置 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | ||
実態調査 | 〇 | ||||||
地域包括支援センター受託者 への委託 | 〇 | ||||||
庁内・庁外連携 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | ||
広報 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |||
島での取組 | 〇 | ||||||
広域連携 | 〇 |
主なポイント
特色ある取組を行っている団体にヒアリングを実施した。
団体名 | 特色 |
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特定非営利活動法人育て上げネット | 若者支援としての教育機関との連携を構築 |
特定非営利活動法人レター・ポスト・フレンド相談ネットワーク | 壮年期世代の居場所づくり |
一般社団法人ひきこもりUX会議 | ひきこもり・生きづらさの当事者・経験者支援 |
支援団体が自治体に求めること
誰もがひきこもり状態になる可能性がある。その場合でも、社会とのつながりを回復できる仕組みを作っていくことが求められており、基礎自治体が中心となって支援体制を構築することが重要である。
支援するにあたり、回復を妨げないよう、次の点に注意する必要がある。
(1)ひきこもることを否定しない
(2)ひきこもり状態にある方の希望に沿った支援をする
(3)支援期間は年単位を想定する
(4)全世代を対象に支援する
(5)ひきこもり状態にある方は多様である
(6)就労をゴールとしない
(7)家族・親族等も支援する
(8)安心できる環境をつくる
取組の具体的な内容は以下が考えられる。
(1)担当する部署の決定 | 支援の推進及び情報一元管理のため所管部署を決定する |
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(2)相談窓口の設置 | 相談に来てもらえるように相談窓口を明確化、周知する |
(3)実態把握 | ひきこもり状態にある方が何人いて、どのようなニーズがあるか、どのような支援ができるかを検討するために、人数調査・ニーズ調査や地域資源を把握する |
(4)庁内・庁外連携 | さまざまな支援を実施するため、庁内・庁外ともに日頃から相談し合える関係性を構築する |
(5)相談してもらうきっかけづくり | 相談してもらうためのきっかけとして、各種媒体を通じた支援実施の周知やイベントを開催する |
(6)支援メニューの用意 | ひきこもり状態にある方の希望に応じた支援を実現するため、地域資源を考慮しつつ、基礎自治体がすべきことを見極め、各団体と連携し、支援メニューを用意する |
(7)地域での理解促進 | 家庭内で抱え込まず外に相談しやすい雰囲気を作るために、社会全体の理解を促進することが必要。地域に密着した支援を実施する民生委員・児童委員など、ゆるやかに理解の裾野を広げていくことも重要である |
(8)評価 | 評価指標の設定では、ひきこもり支援の特性を考慮し、定量的な指標だけではなく、定性的な指標も含めて検討する |
(9)補助金の活用 | 活用可能な補助金の情報を収集し、支援の幅を広げる工夫をする |
基礎自治体におけるひきこもりの支援に関する調査研究への別ルート