報告書について
調査研究の成果をまとめた報告書については、右側のリンクからご覧いただけます。
調査研究の概要
調査研究の背景・目的
子どもの貧困が大きな社会問題となっており、およそ6人に1人の子どもが平均的な生活水準の半分以下で暮らしているとされています。近年、国や先進自治体等が対策に乗り出し、NPO等の民間においても、学習や食事支援といった様々な取組が展開され始めています。
貧困は複合的な問題であり、子どもの成長や生育環境を多面的に捉えながら、様々な施策分野の連携のもと総合的な取組を行っていくことが必要です。
本調査研究では、子どものライフステージ、多摩・島しょ地域が有する地域資源、国・東京都・民間との役割分担や連携のあり方等を踏まえ、多摩・島しょ地域の市町村が基礎自治体の子どもの貧困対策としてどのような取組に重点を置くことが効果的かを検討し、提示しました。
調査研究の内容
子どもの貧困の現状
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相対的貧困のため、周囲から見えにくい。
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経済的困窮という「経済面」の課題を背景に、「家庭・人間関係、精神面」「生活面」「教育面」といった多面的・複合的な課題が発生。
- 経済的困窮がもたらす多面的・複合的な課題に対して手当てがなされなければ、子どもが乳幼児期、学齢期そして青年期とライフステージを追うごとに課題が積み重なり、「貧困の深刻化」へとつながる恐れがある。
- 子どもの貧困の背景には、保護者の状況が大きく関わっており、保護者の成育歴における不利・困難な状況が子どもに受け継がれる「貧困の連鎖」が大きな問題。
多摩・島しょ地域における子どもの貧困対策の現状
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約8割の市町村が、今後、子どもの貧困対策を推進したいと回答。
- 推進上の課題として、人員不足、庁内の連携・情報共有の不足、要支援者を把握することが難しい等が挙げられている(下図表)。
- 民間の取組として、地域の民間団体が運営する子ども食堂や居場所の提供等が多く展開されている。
※ 多摩・島しょ地域の市町村に対するアンケート結果(回答数:39自治体)等より。
子どもに関わる現場関係者から見た子どもの貧困
- 市役所・町村役場の担当部署と連携しているのは約半数、市町村の教育委員会と連携しているのは約3割。
- 有効策として、行政等との連携、行政等との調整を行うコーディネーターの配置が挙げられている(下図表)。
※ 1都3県に勤務する、子どもに関わる専門職(幼稚園教諭、保育士、児童分野専門の保健師、小学校関係者、中学校関係者、高校関係者、医療関係者)に対する調査結果(回答数:531名)より。
多摩・島しょ地域の市町村における子どもの貧困対策
◆ 子どもの貧困対策の目的
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基礎自治体として、保育園や小・中学校等の場を活かしながら、見えにくい貧困を含めて貧困の状況にある子どもたちを把握し、学習や健康・生活面等において対策を行っていくことが必要。
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子どもの貧困対策に取り組むにあたっては、子どもの貧困の問題を社会全体の問題として捉えていくことが必要。
◆ 子どもの貧困対策を推進する上での観点
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基礎自治体は、地域に一番身近な行政として、地域の力を引き出し、地域の活動や資源を子どもの貧困対策につなげていくためのコーディネート役を担うことが重要。
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子どもの貧困の多面的・複合的な課題を見据えながら、様々な施策分野の関係部署・機関が連携することが必要。
◆ 子どもの貧困対策の具体的な取組・事業
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教育分野では、「就学前教育の充実」、「小・中学校をプラットフォームとした支援」、「基礎学力定着の取組」、「高校中退予防の取組」が挙げられる。
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健康・生活分野では、「貧困のリスクが高い子ども・保護者の早期把握・支援」、「食事に関する支援」、「子どもの自己肯定感の醸成に向けた取組」等が挙げられる。
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経済分野では、「生活の基盤を支えるための各種助成・給付制度」、「保護者・青年期への就労支援」等が挙げられる。
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基礎自治体としては、特に、教育分野と健康・生活分野が該当する、支援が必要な子どもを把握し支援へと「つなげる」取組、また困難な経済・就労状況が次世代に受け継がれることの無いように、貧困の「連鎖を断つ」取組が重視される。
正誤表
次の部分に誤りがございました。お詫びして修正いたします。
ご迷惑をおかけし、誠に申し訳ございません。
- P.4 図表2 湯澤直美氏プロフィール等
誤:立教大学コミュニティ福祉学部 福祉学科 教授
「なくそう!子どもの貧困」全国ネットワーク 代表者
正:立教大学コミュニティ福祉学部 福祉学科 教授
※「なくそう!子どもの貧困」全国ネットワーク 代表者 を削除