1 調査の概要
(1)はじめに
調査の目的
高度経済成長期からバブル期にかけて多く建設された公共施設の老朽化に伴う更新は、各自治体にとって大きな課題となっている。本調査研究は、多摩・島しょ地域における公共施設マネジメントに関する現状と課題を整理し、市町村の今後取り組むべき方向性を示すことを目的として実施した。
2 多摩・島しょ地域の公共施設の現状
(1)多摩・島しょ地域市町村の取組状況
- 公共施設白書等を「策定済み」は約4割
- 基本方針(基本的な考え方)を「策定済み」は約2割
(2)施設利用者と住民全体の公共施設に対する意識の比較
- 施設利用者の「施設を増やすべき」は約8割
- 住民全体での「施設は財政が厳しければ減らすべき」は約8割 (ただし、統廃合等に係る行政からの情報提供は約9割が希望)
3 公共施設マネジメント課題と解決の方向性
市町村における公共施設マネジメントの「入口戦略」と「出口戦略」における各課題を、「体制面」、「仕組み面」、「手法面」、「合意形成面」の4つに分け、11の解決の方向性を示した。特に「住民との合意形成」では、行政が(施設利用者に限らず)住民全体と認識を共有し、責任を持って方針や計画を決定する重要性を強調した。
(1)マネジメント組織の整備
- 権限と責任の明確化
- 各部門との連携確保
- トップ(首長)を積極的に巻き込んだ、推進力
(2)庁内人材の強化
(3)データ管理の仕組みづくり
- データ項目の共通化とベンチマーク
- データ収集のプロセス構築
- 情報システムの活用
(4)計画的なマネジメント
- 段階に応じたマネジメント計画類の整備
- 数値目標の活用
- 施設利用者特性に応じた圏域の活用
- 計画運用の仕組みづくり
(5)施設使用料の適正化
- フルコストの定義とその中での受益者負担範囲の方針
- 施設種別の受益者負担割合の方針
(6)維持管理・保全の最適化
- 共通業務の集約化
- 専門職員の確保
- 外部支援の活用
- 予防保全の考え方
(7)pppの活用
- 官民対話の場の設定
- 公による情報提供と適切な事業領域の設定
- 民間にとって魅力のある事業
(8)施設の複合化
- 施設のカテゴリーについての検討
- 複合化によって目指す効果についての検討
- 複合化によって生じるリスク・課題等についての検討
(9)施設利用等の広域化
- トップ(首長)を積極的に関与させること
- 既存の広域連携スキームを活用すること
- まずは「できるところ」から始めること
(10)住民との合意形成の充実
- 情報提供の充実
- コミュニケーションの機会づくり
- アンケート活用による情報収集と理解度向上
(11)将来ビジョンの明確化
- 条例化によるビジョンの明確化と行政・議会・住民等の役割の明示
- 基本方針による目標を達成するための再配置計画策定
4 新たな多摩地域の公共施設マネジメント
(1)体制:「(仮称)多摩地域公共施設マネジメント連携会議」の設置
多摩地域には、全国でも先進的な自治体があり、既に白書や基本方針等を策定するノウハウが蓄積されている。こういったノウハウを共有することで、多摩・島しょ地域全体の公共施設マネジメント水準の底上げが期待される。また、同時に多摩地域全体の公共施設マネジメントのより良い発展も期待できる。
(2)仕組み:公共施設マネジメントシステムの開発
公共施設マネジメントにおいては、情報収集、政策判断、合意形成など様々な手順が求められる。このことから、その一連の手順を「マネジメントシステム」として体系化することが有効と考えられる。
- 公共施設関係データの標準化
- 総合的なマネジメントシステムの導入
(3)手法:広域連携
多摩地域は、広域連携に向けた素地が比較的整った地域である。具体的には、下図のような段階的な広域連携の可能性が考えられる。
(4)合意形成:多様なニーズを踏まえた合意形成
これからの公共施設マネジメントは、施設利用者であり費用負担者である住民との合意形成を行いながら推進していくことが重要である。
- 情報提供:広域的な情報提供基盤の構築
- 情報収集:住民・施設利用者層方からの情報収集の充実
- 意思決定:行政の立案・実行責任の確保徹底