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公と民の協働による社会課題の解決に関する調査研究

[2023年3月31日]

報告書について

調査研究の成果をまとめた報告書については、右側のリンクからご覧いただけます。

調査研究の背景と目的

 自治体の経営資源が限られる中、多様化・複雑化する地域課題を解決するために、行政と民間事業者、大学等が協働で公共サービスの提供などを行う公民連携の必要性が増しています。民間事業者にとっては、地域における課題解決に貢献することで新たな市場の開拓となり、企業の社会的責任(CSR)のみならず、共有価値の創造(CSV)につながります。また、大学にとっても、教育と研究の成果を地域に還元し、地域住民の生活・文化の向上・発展、産業の活性化につなげることを通して、社会の発展に積極的に寄与することになります。

 本調査は、広く行われているハード面に比重が置かれたPFIや公設民営等に関する制度ではなく、公民連携(PPP)として民間事業者や大学等と協働することによる、行政の視点と異なるアイデアも活用した地域課題の解決のあり方、連携手法、それによる効果を幅広く示すことを目的として実施しました。

本調査の対象とする公民連携のイメージ

多摩・島しょ地域における現状

自治体アンケート

多摩・島しょ地域が課題に感じていることは、

  •  行政側の予算が十分でない。
  •  連携が形骸化している。
  •  民間との情報共有の場が十分でない。
  •  行政側の職員の協力が得られにくい。

以上のような庁内体制の課題があります。

自治体の公民連携の課題(複数回答・3つまで)

大学アンケート

大学等が自治体との連携について課題に感じていることは、

  • 学内の人員・予算が十分でない。
  • 連携の効果を把握しにくい。
  • 自治体との情報共有の場が十分でない。
  • 自治体からの予算が十分でない。
  • 教員の協力が得られにくい。

など自治体アンケートと似た傾向の回答となっています。

大学等の公民連携の課題(複数回答・3つまで)

公民連携に取り組んでいる先進事例

先進事例ヒアリング調査結果

 公民連携に取り組んでいる先進事例のヒアリング調査を行い、ポイントをまとめました。

先進事例ヒアリング調査概要
 調査対象 ポイント
 山形県酒田市総務部市長公室 市長公室が担当。公平性と透明性を担保するため、外部有識者も参加する公民連携推進検討委員会で意思決定。
 大阪府豊中市都市経営部創造改革課 大学との連携も含めた公民学連携窓口を開設。プラットフォームを運営し、登録企業などに定期的に情報提供。
 大阪府財務部行政経営課 継続性のある連携協定のために、取り組む内容が5分野10項目以上ないと包括連携協定は結ばない。
 兵庫県神戸市企画調整局参画推進課 補助金付提案制度は、市の課題に提案するWISH型と市の地方創生に資すれば自由に提案可能なACTIVE型を用意。
 Slow Innovation 株式会社 企業・行政・NPO等が集まり、地域の課題解決プロジェクトを生み出すまちづくりプログラムを実施。
 株式会社 クラウドシエン 地域課題を抱える自治体と企業をマッチング。公民連携は双方の間に立つコーディネーターが不可欠。
 NPO法人 コミュニティリンク 自治体とスタートアップをマッチング。伴走支援により双方がWin-Winとなるようマネジメント。
 杏林大学地域交流課 連携する自治体とそれぞれ年2回連携協議会を開催。直接話す機会を設けることで成果につなげている。
 多摩大学産官学民連携センター事務局 協定を形骸化させないよう、包括連携協定を結ぶ自治体とは年1回以上対話し、結果を産官学民連携委員会で確認。

提言

<提言1 庁内職員の意識を向上させる>

 行政組織内だけでは解決が難しい課題に対し、自治体職員は庁外のさまざまな人や事業者、大学等とつながりながら解決策を生み出す柔軟な姿勢と発想力が必要となり、その具体的手段のひとつが公民連携です。庁内の職員の理解が重要ですが、まだ公民連携に対しする認知度が低かったり、誤った認識をもっていたりと、決して十分に理解が浸透しているとは言い難い状況にあります。

 こうした状況を踏まえ各自治体は、首長をはじめ幹部から各部局・課の担当者に至るまで、公民連携について学び、それぞれの役割の中で公民連携による取組の可能性を考えられるようになることが求められます。そのためには、階層別や部・課を対象とした庁内研修を開催したり、公民連携の取組が行われている様子を見学する機会を設けるなどして、具体的にイメージできるようになるとよいです。中でも成功体験の学習効果は高く、一度経験すると再びチャレンジする可能性もあることから、まずは小さくても庁内でひとつ成功体験をつくり、その成果を学習の場面でも有効活用することが、新たな公民連携を生み出すきっかけとなります。


<提言2 多様なパートナーとつながる>

■連携候補の事業者の探し方

 他自治体で同じような課題に基づき連携した実績がある企業は社内体制が整っており、また近年はCSVやCSR、SDGs、ESGなどの専用問合せ窓口をもっている企業も少なくないため、そのような企業は連携しやすくなっていると考えられます。

 また、自力で探すことが難しい場合は、仲介サービスの活用も考えられます。その際は、コーディネート機能が重要とされていることから、マッチング後の伴走支援を行ってくれるようなサービスを提供している事業者を選択することもポイントのポイントのひとつです。

■自治体から課題を提示する場合は、自治体も企業もやりがいを感じる課題を提示

 連携に先立ち自治体から課題を提示する場合は、連携先の事業者が参画の意義を感じられるような工夫が求められます。公民連携は連携相手のニーズを把握しておく等、課題設定に留意する必要があります。

■公民連携窓口の明確化

 公民連携において自治体側の最初の接点になるのが、公民連携担当窓口です。担当窓口を明確にすることは外部から自治体の相談先が探しやすくなるメリットがあります。

 一方、専門性やネットワークが重要な公民連携の窓口業務は、信頼関係の上に情報が集まるため、業務が属人化しやすい点に注意が必要です。

■連携に至らなかった事業者に対するフォロー

 相談の結果、協定等には至らなかった場合であっても、関心を示してくれた企業には公民連携担当窓口より定期的にメールマガジンを発行するなど、引き続きフォローアップをして、つながりを維持することが大切です。このことにより、次第に理解が深まり、具体的に連携が動き出すなど今後につながる可能性もあります。


<提言3 パートナーとの信頼関係を構築する>

 行政と企業、大学等は価値観が異なるため、「互いに異なる視点を持っている」ということを前提に考えることが必要です。信頼関係を構築するには、まずお互いを理解することから始めることが重要です。そのためには、じっくり対話を重ねてお互いのゴールをしっかり共有することが不可欠であり、そうすることで連携の形骸化を未然に防ぐ効果も期待できます。


<提言4 公民連携を行う目的を明確にする>

 公民連携に取り組む課題認識は自治体によってさまざまであり、中には支出抑制の手段のひとつとして公民連携に着目する自治体もあります。しかし、予算をかけないことを前提にした公民連携は、住民サービス低下のリスクや連携パートナー選びの選択肢を狭めるデメリットもあるため、目的の達成に照らした費用対効果の視点が必要です。


<提言5 持続可能な協定を締結する>

 企業にせよ大学にせよ、協定を結ぶ際は、連携を通じて達成する成果を事前に共有することが大切です。特に包括連携協定の場合は幅広い分野での連携となるため、より広範に項目を整理する必要があります。協定締結後も毎年定期的に対話の機会を持ち、コミニュケーションを続けることが、形骸化予防につながります。一方、協議の初期段階では、内容を事前に固めすぎると相手からの提案を受け入れる余裕がなくなり、不調に終わりやすくなります。これは自治体にも企業等にも当てはまります。そのため、対話を通じて協働で創り上げるコ・クリエーションの精神が大切です。


まとめ

 自治体を取り巻く環境が大きく変化している中、大学を含め民間事業者等との協働による社会課題の解決が注目されています。自治体、住民、企業、大学等は、同じ地域に活動拠点がある限りその地域づくりの主体でもあります。多様化・複雑化する社会課題の解決に向けて、行政を担う自治体だけではなく、その地域に根ざした住民、企業、大学等が、それぞれの視点や特性を生かしながら協働していくことが重要です。

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問合せ

公益財団法人 東京市町村自治調査会 企画調査部 調査課
電話: 042-382-7722 ファックス: 042-384-6057

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