報告書について
調査研究の成果をまとめた報告書については、右側のリンクからご覧いただけます。
調査研究の概要
調査研究の背景と目的
総務省から自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画が発出され、デジタル社会の構築に向けた取組を全自治体において着実に進めていくこととしている中、情報システムの標準化・共通化に加えて、各自治体で抱える地域課題の解決のためにデジタル技術を有効活用できれば、自治体業務の変革や住民の生活利便性向上の実現が期待できます。
本調査研究は、DXに関する基礎知識を網羅的かつ簡潔に取りまとめつつ、地域で優先的に取り組むべき課題を絞り込み、新たな公共サービスの内容や導入ステップなどを調査・整理することを目的として実施しました。
デジタル・トランスフォーメーションとは
- 本調査においては「自治体のDX」を以下の定義としました。
「紙などのアナログからデジタルへの変換」や「ICT化を進めることによる業務の効率化」を通じて、住民の生活利便性向上や自治体職員が効率的・意欲的に働けるようにすることを一要素としつつ、更に、デジタル技術の活用により公共サービスのあり方を変革させること。
- 特に、「既存の各業務が効率化される」ことについては、少子高齢化の急速な進展とともに、現状でも厳しい財政状況が更に厳しくなる可能性があるため、重要性は高いと考えられます。
- 一方で、デジタル技術を活用することだけで地域課題のすべてを解決できるわけではありません。DXは手段であり目的ではないという意識を持つことが重要です。
多摩・島しょ地域における現状(自治体アンケート・文献調査より)
- デジタル技術の活用時に特に重視する観点では、「行政業務・事務の効率化や省人化」や「限られた財源の有効活用」など、既存の各業務の効率化に関連するものを期待する自治体が多い。また、「住民目線の公共サービスの提供」を重視する自治体は約7割となっている。
- デジタル技術の活用に際しての懸念では、人材やコスト面を挙げる自治体が多い。その他、職員の理解や導入効果、分野とデジタル技術のマッチングなどが挙がった。
- デジタル技術等の活用可能性があるとされている政策課題分野のうち、重点的に対処している政策課題としては、「情報化・ICT」や「組織・職員」に次いで、「児童福祉・子育て」と、「災害対策・防災」を挙げる自治体が多かった。
多摩・島しょ地域の住民の認識(住民アンケートより)
- 圏域、年代を問わず、自治体が今後デジタル技術の活用を積極的に推進することに対して肯定的な意見が多数を占めました。特に、60代以上ではその割合が高く、多くの住民がデジタル技術の活用を推進すべきと考えていることがわかりました。
DXに関する事例分析・ケーススタディ
- DXに取り組むことでどのような課題が解決され得るのか」を把握するために、DXの先進事例を調査し、その結果、全国の自治体において、さまざまな行政事務の分野のDXに取り組んでおり、これまでの業務のあり方が見直されるとともに業務の効率化や住民の生活利便性の向上が進んでいることがわかりました。
- ケーススタディでは、多摩・島しょ地域においても広く参考としやすいと考えられる3分野を絞り、取組プロセスや庁内体制、課題と対応策を調査・整理しました。3事例のケーススタディの結果、個別分野のDX施策を推進する際には、現状の公共サービスの提供方法や、住民ニーズを最も把握している原課が主体的に動くことが重要となることに加えて、デジタル技術の活用や、他の分野への展開の可能性、庁内システムとの兼ね合いといったさまざまな観点からの検討が必要になることが明らかになりました。
提言(DXの進め方)
- 自治体がDXを通した地域課題の解決に取り組む際のポイントを下図のとおりまとめました。
- DXに取り組む際には、下図のような課題が生じると考えられますが、それぞれ先進事例や近隣自治体における対応策を参考としながら解決していくことが必要です。
- 自治体アンケート及び住民アンケート結果を比較すると、自治体が重点的に対処している政策課題分野と住民のニーズに一定のギャップが生じている可能性も示唆されます。住民のニーズを丁寧に汲み取るための工夫が必要と考えられます。
おわりに
- 自治体のDXを推進するにあたっては、「住民の生活利便性向上」を実現するため、地域課題をより把握している原課の職員が、情報系の部局や企画系の部局と連携しながら主体的に取り組むことが求められます。
- DXはあくまでも手段であり、目的ではないことにも留意が必要です。ただ単にデジタル技術の導入を目指すのではなく、真に住民の生活利便性向上や地域課題の解決につながる取組とは何かを慎重に検討する姿勢が重要となります。