基礎自治体におけるブロックチェーン技術の活用に関する調査研究
- [初版公開日:]
- [更新日:]
- ID:1060

報告書について
調査研究の成果をまとめた報告書については、右側のリンクからご覧いただけます。

調査研究の概要

ブロックチェーンの概要

ブロックチェーンとは
- ブロックチェーンとは、情報通信ネットワーク上にある端末同士が直接接続してやり取りを行い、その記録を分散的に処理・記録できるデータベースである。
- ブロックチェーンには、モノの受け渡しなどで発生したやり取りの記録(以下、取引等データ)が保存される。暗号化された取引等データが一定量溜まると1つの「ブロック」にまとめられ、時系列順に一本の鎖(チェーン)のようにつながる構造である。
- ブロックチェーンによるデータベースは、従来のデータベースと異なり、中心となるサーバがない。ブロックチェーンの参加者全員が同じデータを共有・同期している。そのため、1人の参加者のデータが破損・紛失したとしても、他の参加者によって補完することが可能であり、データ喪失リスクの低いデータベースを構築することができる。



ブロックチェーンの3つの特徴
(1)耐改ざん性に優れている・・・全員で同じデータを共有しているため、悪意のある者が自身のデータを書き換えても、他者と一致しないため、事実上改ざんが不可能
(2)履歴の追跡ができる・・・ブロックチェーンに記録されたデータは、時系列順に全て保存されているため、過去にどのようなやり取りがあったのかを、遡って確認することが可能
(3)データを全員で共有できる(透明性が高い)・・・参加者(ノード)全員が同じデータを共有している(分散して保存している)ため、透明性の高いやり取りが可能


先進事例調査

先進事例調査の概要
|
調査対象 |
活用事例 |
---|---|---|
自治体 |
福岡県飯塚市 |
住民票等各種証明書のデジタル化 |
熊本県熊本市 |
行政文書を安全かつ透明性の高い情報として公開 |
|
佐賀県佐賀市 |
ごみ発電電力の地産地消による環境価値を電子証書化 |
|
石川県加賀市 |
マイナンバーカードとブロックチェーンを活用した行政サービスの提供 |
|
福島県磐梯町 |
地域商品券をスマホアプリによって発行 |
|
民間企業 |
NTTテクノクロス株式会社 |
沖縄の交通系ICカード「OKICA」を活用したMaaSデータプラットフォームの構築 |
株式会社INDETAIL |
北海道・厚沢部町での地域通貨「ISOUコイン」 |
|
xID株式会社
|
マイナンバーカードを利用した「xIDアプリ」を石川県加賀市や滋賀県日野町等へ提供 |
|
株式会社電通国際情報サービス |
宮崎県綾町等での有機野菜のトレーサビリティ |
|
海外事例 |
エストニア |
法律文章の管理、ヘルスケア関連のデータ管理システム |
ノルウェー |
水産物におけるトレーサビリティ |
|
オーストラリア |
グリーンマンションを活用した電力取引 |
|
アルバ |
新型コロナウイルス陰性デジタル証明 |
|
オランダ |
年金管理 |
|
韓国 |
新型コロナウイルスワクチンの接種証明 |

先進事例調査によって見えてきたこと
<ブロックチェーンの利用方法>
(1)第三者への証明として利用
(2)移動履歴を追跡して記録を残すことに利用
(3)広域的な共有として利用
(4)新たな経済付加価値に利用
<ブロックチェーンの構築・運用の傾向>
- 調査した自治体では、「コンソーシアム型」又は「プライベート型」で導入
- 運用保守は自治体職員ではなく、構築ベンダーやサービス提供ベンダーが実施
- 利用者は一般的なサービスやシステムの感覚で利用可能
- 導入コストは構築ベンダー等が負担し、自治体はフィールドを提供している事例が多い
<ブロックチェーンの採用を阻む課題と解決策>
- ブロックチェーンを理解することの難しさ ⇒ 技術的内容よりも「何ができるようになるか」を理解する
- 技術者が希少なこと等による導入費用の高額さ ⇒ 技術が一般化することへ期待、複数自治体で連携し広域で調達する

自治体アンケート調査

ブロックチェーンの認知状況及び活用状況
- 半数以上の自治体がブロックチェーンの内容を把握していない
- ブロックチェーンを現在利用している自治体は存在せず、「検討を行ったことがない」自治体が大多数を占める


ブロックチェーンの検討をしたことがない理由
検討を行ったことがない理由としては、ブロックチェーンに関する知識不足や具体的な利用イメージが湧かないことが主な要因である。


多摩・島しょ地域におけるブロックチェーンの活用可能性

ブロックチェーンが自治体へ提供する機能
ブロックチェーンが自治体に提供する機能は、「証明」「移動履歴の記録・追跡」「広域行政・共有」「経済付加価値」の4つに集約される。
それぞれの自治体が抱える課題を解決するにあたり、実現する必要のある機能がこれらに含まれる場合、ブロックチェーンを活用できる可能性がある。


多摩・島しょ地域におけるブロックチェーンの活用
多摩・島しょ地域の現況・課題とブロックチェーンで実現できる機能を基に、3つのユースケースを作成した。
(1)災害時の支援物資に関するマッチングシステム
災害時の支援物資について、被災者に必要な物資が着実に行き渡るよう、被災者と支援者間での物資のマッチングを行う。

(2)地域エコポイントとJ-クレジットを利用した地域脱炭素の促進
家庭や地域企業におけるエコ活動を促進するため、活動に応じエコポイントを付与。また、国のJ-クレジット制度を活用し、日本全体での二酸化炭素削減に貢献する。

(3)地域貢献の可視化と共有
個人が実施したボランティア活動を可視化。ボランティア同士で共有することで新たな繋がりの醸成や、住民同士での助け合いのきっかけを作る。
