自治体における長期休暇取得等に伴う生産性維持に関する調査研究~業務のしわ寄せを生じさせない組織づくりに向けて~
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報告書について
調査研究の成果をまとめた報告書については、右側のリンクからご覧いただけます。

調査研究の概要

1 公務員の長期休暇・休業取得の現状と課題
- 2020年度から、国は、子どもが生まれた全ての男性国家公務員が1カ月以上をめどに育児を伴う休暇・休業を取得できることを目指す取組を開始しており、地方公務員にも各種休暇・休業制度の積極的な活用が求められている。
- 各種休暇・休業制度の活用が徐々に促されてきたものの、長期休暇・休業取得者が発生した際における組織の生産性の維持について、十分な議論がなされていない。
- 一方で、地方公務員数は減少傾向にあり、限られた人員で自治体業務を対処する必要がある。
- 以前よりも各種休暇制度の活用が求められる中、職員数が減少傾向にあることで、長期期間の休暇や突発的な休業が発生した際の、一部職員への負荷は増大するおそれがある。
- 本調査研究では、「長期休暇・休業取得者、休職者の発生により、職場の職員数が減少し、これまでと同様の業務継続が困難となる、残された職員に心身の負担がかかる事態が発生すること」を業務の「しわ寄せ」と定義し、「しわ寄せ」を生じさせない取組や、健全な組織体制の構築を探った。
<しわ寄せの発生イメージ>


2 多摩・島しょ地域における現状

自治体アンケートから得られた示唆
- 人事担当部署による、一部職員へのしわ寄せの実態把握状況度合いにばらつきがある。
- 休暇・休業期間の予測が困難であること、業務が属人化していることが一部職員へのしわ寄せへの対処を困難にしている。
<過去5年に、人事担当部署が長期休業による一部職員の業務量の増大について相談を受けた件数>(SA)

<長期休業取得や退職に伴う人員不足に対処するための組織体制構築に向けて課題と考えること>(MA)


職員アンケートから得られた示唆
- 過去5年間で、職場で長期休業が発生した経験がある職員の割合は約8割。休業の事由によって、業務への影響の仕方が異なる。
- 現在の職員体制で長期休業が発生した場合に、早々に必要な業務体制を構築できると考える割合は約5割。また、普段から働きやすい傾向にある職場では業務体制が構築しやすい傾向が見られた。
<過去5年間における、職場で長期休業が発生した経験>

<同僚が長期休業する際、業務体制を早々に構築できるか>(SA)


3 しわ寄せ解消に資する事例調査
しわ寄せの発生による業務量の低下や、職員への負担増大を解消するために必要と考えられる「生産性向上」、「人員増」、「業務減」に資すると考えられる特徴的な取組を行っている自治体や民間企業に対してヒアリング調査を実施し、主に以下のような示唆が得られた。
生産性向上に向けた取組 |
・休む側と組織に残る側の職員双方がいつ何をすべきかを整理し、共有する情報を明確化することが重要である。(盛岡市) ・突発的に業務ができない事態や時間制約のある働き方を想定した研修は、離脱する職員だけでなく、周囲の職員の働き方を同時に改善することにつながる。(キリンホールディングス株式会社) |
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人員増に向けた取組 |
・総人件費の抑制に配慮しつつ、業務量に対して適切な人員を確保することが重要である。(さいたま市) |
業務減に向けた取組 |
・業務の削減にあたっては、長期にわたって継続している業務について、原則廃止を前提に検討することを求めるなど、常に業務の見直しを念頭に置いておくことが重要である。(明石市) |

4 公務員の長期休暇・休業取得の推進としわ寄せの解消に向けた提言
調査結果を踏まえ、多摩・島しょ地域における長期休暇取得等に伴う一部職員へのしわ寄せ解消に向けて、以下のような取組施策を実施することが求められる。
取組内容 | 具体的施策 |
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職員の現状把握・意向把握に向けた取組 | (1)ワークライフバランス/働き方改革に関する現状・意向把握調査の実施 |
コミュニケーション活性化に向けた取組 | (1)情報共有の徹底 (2)属人化の解消 (3)予行練習 (4)評価・フィードバックの改善 (5)職員向け研修の実施 |
業務量削減に向けた取組 | (1)業務の棚卸し (2)不要不急の業務の見直し |
人員の確保に向けた取組 | (1)応援職員によるサポート (2)正規職員の再配置・異動 (3)休暇・休業取得を見込んだ全庁的な人員計画の策定 (4)余剰人員の配置 (5)非常勤職員の雇用 (6)職員定数の見直し |