多摩・島しょ地域自治体におけるSDGsに関する調査研究
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報告書について
調査研究の成果をまとめた報告書については、右側のリンクからご覧いただけます。

調査研究の概要

調査研究の背景と目的
2015年9月に国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダと開発目標(SDGs)」が世界的に広まっており、日本の自治体においても急速に取組が拡大しています。
そのような状況を踏まえ、本調査研究は、多摩・島しょ地域自治体のそれぞれの状況や段階に応じて、取組を進められるような情報を提供するとともに、多摩・島しょ地域自治体におけるSDGs達成に向けた取組のあり方について提示し、取組を通した地域課題の解決、持続可能なまちづくりに資することを目指しました。

自治体SDGsに関する概要
2016 年12 月に我が国の指針として決定した「持続可能な開発目標(SDGs)実施指針」には、自治体の役割が明記されており、自治体は各種計画等にSDGs の要素を反映することや、関係する住民や企業などのステークホルダーとの連携の強化が求められています。
自治体にとってもSDGs はメリットがあり、初歩的な取組においても多様なステークホルダーとゴールを共有できたり、地域の立ち位置を確認できたりします。
一方で、SDGs に対する理解度が不十分なまま、形式的な取組となることが少なくなく、結果として、SDGs に取り組んでいるふりになってしまうケースもあります。

多摩・島しょ地域における現状と課題

自治体アンケート
- SDGs に対する関心は高いものの、SDGs を政策のアップデート(これまでにない視点の追加や未解決・未実施の課題への着手等)に積極的に活用している自治体はまだあまり見られていません。
- 全庁的な組織の設置はなく、地域の事業者などとの連携もほとんど見られていません。
- SDGs に関する宣言やビジョンを策定しているケースはほとんどなく、目標・指標の設定、活用はこれからの状況です。
- 計画行政との関連では、SDGs を総合計画に位置づけて取組を進めていこうとする傾向が強く、評価・フォローアップ体制の構築・検討もこれからの状況であり、SDGs を積極的に導入・活用しようとする気運はまだ表れていません。
- SDGs 推進の課題・障壁は、行政内部での理解・経験・専門性や予算・資源の不足が多く挙げられ、支援策としてはガイドライン・アドバイス・情報提供と、補助金交付・財政措置等が挙げられています。

▲多摩・島しょ地域におけるSDGsに関する取組の推進状況(SA)

住民アンケート
- SDGs の認知度は約4割ですが、SDGs のゴールには6~8割の共感が得られていることから、わかりやすく伝えることで共感を得られる可能性があります。
- 過半の住民は自治体SDGs の取組への参加・協力に前向きです。「わからない」という層も多いため、SDGs の認知が進めば、さらに住民の理解や協力が広がる可能性があります。
- 人口の増加が見込まれる自治体は、住民が参加・協力により積極的な傾向が見られます。逆に人口の減少が見込まれる自治体は、啓発活動により力を入れる必要があると考えられます。

▲居住する市町村のSDGsの取組に参加・協力したいか(SA)

自治体SDGsに関する事例分析

自治体における先進事例
効果的な取組を進めている先進事例には、ステークホルダーとの連携や計画行政への位置づけ等のパターンがありました。
パターン |
該当の自治体 |
ポイント |
---|---|---|
大学・JCなど核となるステークホルダーとの連携 |
金沢市等 |
・それぞれの強みを生かした連携体制を構築 ・計画等の策定当初からステークホルダーと協働し、連携の輪を広げている |
内閣府の枠組みの活用・企業との共創関係 |
日野市等 |
・SDGsを共通言語として活用し、官民連携を推進 ・企業と連携し、GISを活用したローカル指標の設定・活用に取り組む |
庁内の仕組みの構築、計画行政への位置づけ |
鎌倉市等 |
・17のゴールを、各施策の強み・弱みを抽出するファーストステップに参照 |
市民との共創の推進 |
金沢市・日野市・鎌倉市等 |
・SDGsを、多様なステークホルダーが同じ方向を見て協力できるものと捉え、共創関係の構築に活用 |

多摩・島しょ地域におけるステークホルダーの取組状況
- 多摩・島しょ地域においても、金融機関や大学、青年会議所がSDGs を推進しています。
- 長崎大学島嶼SDGs プロジェクトや公益社団法人日本青年会議所等の取組を参考にすることで、多摩・島しょ地域のステークホルダーと連携して取組を進められる可能性があります。

SDGs未来都市の取組状況
SDGs 未来都市は、自治体によるSDGs の達成に向けた優れた取組を提案する都市として内閣府が選定しています。
- SDGs未来都市アンケート結果より、7割が全庁組織を設置して取組を推進しています。
- 担当の所属部署や庁内の複数部署で理解が広がっているものの、全庁的な理解の浸透には至っていない傾向が見られます。
- 目標と指標については、ビジョンの設置と17 のゴールとの対応関係の整理から着手するケースが多いことが伺えます。

▲SDGsの理解度(n=63 MA)

▲SDGsの目標・指標(n=63 MA)

多摩・島しょ地域における自治体SDGs推進のあり方
形式的にSDGsのゴールと事業・施策を整理・対応させるだけでなく、自治体がSDGsに取り組む意義やメリットをはっきりと認識した上で、自地域に適した形で効果的に取り組んでいくことが重要です。SDGs未来都市をはじめとした先進事例等のインタビュー調査から得られた意義・メリットを以下の表にまとめました。
また、SDGs達成に向けた取組を通じて、地域課題の解決や持続可能なまちづくりにつなげていくためには、SDGsの17のゴールを踏まえ、169のターゲットレベルで目標や施策を検討・工夫し、論理性を持たせながら必要な指標をローカライズして設定しつつ、総合計画等に反映させていくことが重要です。
意義・メリット |
概 要 |
---|---|
(1)政策のアップデート |
SDGsを通じてこれまでになかった視点を追加し、解決していなかった課題、取り組めていなかった課題に着手するきっかけにできる。 |
(2)インターリンケージ (課題や目標が、それぞれつながっているという捉え方や考え方) |
それぞれの課題や目標をつなげて捉え、経済・社会・環境の3側面の相互連関を踏まえた取組にすることができる。 |
(3)外部との連携 |
SDGsを共通言語としてゴールを共有することで、地域の多様なステークホルダーとの連携関係の構築や協働をスムーズに進められる。 |
(4)国際的なフレームワークでの取組の推進 |
SDGsを共通言語とすることで、他都市との交流も進めやすくなる。自治体と国際機関が直接結びつくことにつながる。 |
(5)グローバルな視点での見直し・質の向上 |
国際的なフレームワークで政策や取組を見つめ直すことをで、グローバルな視点から政策の質を高めることができる。 |

自治体におけるSDGs推進モデル(ルーブリック/取組フロー)の提案
SDGs未来都市及び多摩・島しょ地域自治体のアンケート結果等をもとに設定した「自治体SDGs推進モデル」と、自治体が取組を次のステップに進める上での障壁(ボトルネック)を参考に、解決策を検討することで効果的にSDGsの取組を進めることができます。
人員等の体制面や委託費等の財政面により取り組むことが難しい島しょ地域においても「島しょSDGs・フォーマット」、「島しょSDGs・指標例一覧表」を参考とすることで簡易に取り組めます。
右側のリンクから、報告書のPDFファイルと併せて、「島しょSDGs・フォーマット及び指標例一覧表」のExcelファイルをダウンロードすることができます。
