報告書について
調査研究の成果をまとめた報告書については、右側のリンクからご覧いただけます。
調査の概要
平成30年度複数年調査とは
平成30年度複数年調査とは、当調査会が平成29年度に実施した「多文化共生に向けた地域における国際交流に関する調査研究」(1年目調査)と、その調査結果を活用して平成30年度に実施した本調査(2年目調査)の総称です。
調査研究の背景・目的
国は出入国管理・難民認定法の改正を中心に、外国人の受入れを拡大する方向で大きく政策転換を図っています。また、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会(以下「東京2020大会」という。)を控え、更なる外国人旅行者の増加も見込まれています。これらの状況を踏まえると、今後、在住及び在勤、訪日外国人が増加すると見込まれる多摩・島しょ地域にとって、これまで以上に多文化共生の取組が喫緊の課題となることは明白です。
しかし、1年目調査で明らかになったように、多摩・島しょ地域自治体では多文化共生の取組は進んでおらず、今後の推進にも課題が残っています。そのため、多文化共生の取組を実施する上で、取組分野や地域の特性を考慮した、取組の優先順位付けが有効です。
このため、2年目調査は、「改めて多文化共生の必要性について時勢を踏まえながら示した上で、分野や地域別に優先順位の高い取組について提言することで、多摩・島しょ地域自治体における持続可能な地域づくりに資すること」を目的として実施しました。調査研究の内容としては、1年目調査で取りまとめた取組に加え、実際に各自治体で実施する場合のポイントや工夫点、留意すべき課題等について、実際に多文化共生に係わる自治体職員を交えたワーキンググループ等を通じ掘り下げることとしました。
本調査研究において重視している観点
多摩・島しょ地域においても人口減少・少子高齢社会の進行は著しく、今後も進行する見込みです。そのなかで、これまで「支援を受ける立場」として捉えられることが多かった外国人を、「地域の担い手」として捉えることで、不足する地域の担い手を補い、持続可能な地域の形成につなげることが可能となります。そのため本調査研究では、「外国人住民が地域の担い手になるために必要な取組」という観点を重視し、数ある多文化共生施策の中でも、外国人住民が地域の担い手になるために必要な取組を重点的に記載しています。
なお、より詳細な提言を行うため、調査対象とする分野を「防災」、「福祉」、「留学生」の3分野に限定いたしました。なお、福祉については特に幅広い分野であるため、そのなかでも外国人が活躍できる「高齢者福祉」及び「子育て支援」分野に限定いたしました。
多摩・島しょ地域自治体アンケート結果
多文化共生の取組全般に関する結果
- 多文化共生に係る施策を所管している部門は、「企画」が最多で17自治体、次いで「文化・コミュニティ」が11自治体
- 「日本語教育の運営・運営支援」が最も多く取り組まれているが、半数に満たない
- 外国人施策全般の推進は進んでおらず、今後の実施予定がない自治体が半数
各分野における結果
- 防災(実施自治体:24自治体)
8自治体が「防災訓練への参加促進」を実施している - 高齢者福祉(実施自治体:7自治体)
2自治体が「日本人高齢者を対象とした異文化理解・交流に関する取組」を実施している - 子育て支援(実施自治体:21自治体)
8自治体が「日本人児童の幼少期・学齢期における、保育施設及び教育機関での国際教育に関する取組」を実施している - 留学生支援(実施自治体:10自治体)
6自治体が「外国人留学生の地域活動に関する支援」を実施している
外国人が活躍できる多摩・島しょ地域をつくるための課題と取組
外国人住民の活躍を期待する場面と役割
多摩・島しょ地域自治体アンケート結果では、今後多文化共生施策を推進する予定があると回答した自治体は半数以下でした。また、外国人住民の活躍を促進する取組を実施している自治体はさらに少ない状況でした。そのため、まずは外国人住民の活躍を期待する主な場面と役割を例示することにより、活躍促進に向けた取組の土壌を構築することが有効です。
外国人住民の活躍を促す上での自治体の課題
外国人の活躍を促すためには、これらの課題を解決するに先立って、まずは外国人との接点づくりが不可欠です。しかし、地域によって外国人住民の多寡や多文化共生に関わる団体・組織等の有無があるため、接点づくりに向けたアプローチは異なると考えらます。そのため、まず外国人の活躍を促す上での自治体の課題を整理しました。
活躍を促すための外国人住民との接点づくりに向けた自治体の取組
これまでの課題等の整理を踏まえ、活躍を促す上で必要な、外国人住民との接点づくりに向けて、自治体が取り組むべき施策を整理しました。
多文化共生に関わる地域特性を踏まえた分類
持続可能な地域づくりに向けて、各分野で多文化共生に取り組む必要があります。しかし、各自治体において、各分野全てに取り組むことは財政上困難です。また、外国人や多文化共生を取り巻く状況は市町村により異なります。
そのため、市町村が地域の実情に応じて、特に優先的に取り組むべき施策を抽出するため、地域分類を設定しました。そして、地域分類に応じた取組の方向性とそれに基づいた取組を整理しました。各自治体においては、本地域分類に基づき、特に優先的に取り組むべき施策を抽出し、段階的に展開していくことが望まれます。