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自転車とまちづくりに関する調査研究報告書 概要

[2015年3月31日]

1 調査研究の概要

 本調査研究は、健康、環境、観光、快適などをキーワードとした自転車利用「促進論」と、自転車事故や放置自転車の増加等を懸念する「抑制論」が混在する現状下において、市町村が「自転車を活かしたまちづくり」を、限られた予算や人材・体制にあっても、着実に進め、創り上げていけるよう手法を検討することにより、市町村職員が、自転車まちづくりの構想や事業を、一から構築し実践していく際の効果的な取組方を提示することを目的として行った。

 

2 多摩・島しょ地域で「自転車とまちづくり」を考える際の与件

(1)多摩・島しょ地域の「自転車利用環境」

  • 多摩地域は先進都市と比較して「平坦な土地で走行しやすく」、「市域をまたぐ移動(駅アクセス等の利用)が活発」な傾向
  • 「走行安全性や走りやすさ」については、総じて「通勤・通学」利用者よりも、「買い物」利用者の評価が低い傾向 など

(2)多摩・島しょ地域住民の「自転車利用状況」

  • 多摩・島しょ地域住民全体の「約半数が月1回以上」、「約4~5割が毎週定期的(週1回以上)」に自転車を利用
  • 利用者のうち、年齢階層別では若年層の利用率が高いが、「高齢層でも約4割が毎週定期的(週4~5日以上)」に自転車を利用
  • 最もよく利用する目的としては、「約5割が買い物」と最も多く、次いで「約2割が通勤」、「約1割が通学」 など

(3)多摩・島しょ地域市町村の「自転車とまちづくり」の取組状況と今後の意向

  • 「教育・子育て分野」、「環境分野」、「都市づくり・交通・防災分野」で取組が比較的活発
  • 自転車通行空間・駐輪場整備では、「道路幅員・用地の確保」が最大の課題であり、次いで「財源の確保」
  • 今後の取組意向としては、「都市づくり・交通・防災分野」、「産業・文化・観光分野」の順で高い傾向にあり、現在、取組が活発な政策分野(「教育・子育て分野」や「環境分野」)とは異なる傾向
  • 多摩地域では既に「広域連携」の取組がみられ、今後も様々な形での連携の進展が期待される。 など

 

3 市町村における「自転車とまちづくり」の政策論

(1)市町村の各政策分野の課題解決に寄与し得る「自転車の効用」

・自転車の利用は、単に「移動手段としての利便性向上」のみならず、市町村の「各政策分野における課題解決や目標達成にも寄与し得るツール」であり、あらためて「自転車の効用・活用可能性」について一考する価値がある。

・自転車の活用に対する市町村・住民の関心度は、双方とも「環境」面では類似する一方、市町村は「観光」・「健康」面をより強く意識するのに対し、住民は「都市交通」手段としての活用促進を期待する傾向

(2)「自転車利用促進」に際して解決すべき課題

・状況が改善してきているものの依然として残る「放置自転車問題」や、「対歩行者の自転車事故件数の増加」、それに伴う「自転車加害者への損害賠償判例の増加・高額化」などが重大事項。自転車利用促進の取組は、これらの課題解決とともに一体的に進めていくことが欠かせない。

(3)「自転車利用」に関わる国の政策動向・法制度改正

・我が国の自転車政策は半世紀近い歴史があり、近年は「自転車の車道通行の徹底」と、これを踏まえた国の「安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン」の策定、「自転車で悪質な違反を繰り返した者への安全講習受講義務付け」など自転車ルール違反に対する厳罰化が進む。また、「健康」・「環境」面、「都市再生」の文脈で、特に自転車利用の促進に期待が寄せられるなど、「安全利用」と「利用促進」の政策が並行して進められている状況

 

4 市町村における「自転車とまちづくり」の方法論

 様々な政策分野や空間整備において、「自転車を活かしたまちづくり」を進める上で、市町村職員が構想や事業を立案する際に留意すべき取組方について、3つの視点(走行空間・政策分野・推進体制)から10点のポイントを抽出した。

5 多摩・島しょ地域の「自転車とまちづくり」を巡る環境変化の見通し

 「自転車のまちづくり」として市民に認知され、総合的な取組に至るまでには、中長期的に取り組む必要がある。

 多摩・島しょ地域市町村が、これから自転車まちづくりに取り組んでいくに際し、今後10年程度を見据え、想定しておくべき社会動向・環境変化の特徴として、次の3点が挙げられる。

  1. 「高齢者の買い物目的での自転車利用の増加」
  2. 「高齢者の自転車事故や高額訴訟リスクの増加」
  3. 「観光・交流の活性化手法としての自転車活用の可能性増大」

 

6 多摩・島しょ地域における「自転車とまちづくり」展開方法の提案(3つの提案)

(1)「にぎわいづくり」×「買い物自転車の適正利用」の視点からの展開

  • 商業施設の至近への駐輪場整備を社会実験として実施
  • 交通安全講習の受講者への駐輪場の優先利用権の付与など、複数の政策面から実施 など

(2)「地域コミュニティの醸成」×「子ども・高齢者の事故削減」の視点からの展開

  • 学区道路の危険箇所点検のワークショップを交通安全講習に先立ち実施
  • 事故削減などの有効性が認識された段階で、通行環境整備などを計画的に実施 など

(3)「インバウンド観光による産業振興」×「広域での通行空間整備促進」の視点からの展開

  • ガイドによるサイクリングツアーなどを官民連携で実施し、利用者の評価を調査
  • インバウンド観光向けに、ルートを明示するサインを統一化・ネットワーク化 など

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