誰にも伝わる情報発信に関する調査研究報告書 第2章 自治体から住民への情報発信の現状 1. わかりやすい情報発信の必要性 2. 多摩・島しょ地域の自治体によるわかりやすい情報発信の取組 3. 多摩・島しょ地域の住民の情報入手の状況 4. 高齢者・障害者・外国人の情報入手の状況 5. 多摩・島しょ地域におけるわかりやすい情報発信の問題点 1.わかりやすい情報発信の必要性 自治体が住民に向けて発信する情報は、行政施策の情報や、社会生活に必要な情報、生命や財産に関わる情報など、多岐にわたる。どのような情報であっても、対象となる住民に確実に伝え、行政サービスの周知や利用促進、必要な手続きの遂行、必要な行動などを促すことは重要である。 しかし、自治体からの情報に、住民にとってわかりづらい表現や内容があることも残念ながら事実である。情報が正確に伝わらないことで、誤解を生じたり、必要な手続きに不備が生じたり、生命の危機に見舞われることもある。 住民が感じるわかりにくさの原因の一つには、発信している情報に公文書独特の表現や用語が用いられていることがあると考えられる。行政機関同士や行政内部でやりとりされている「公文書」には、表現方法や語彙、書式などに一定の基準がある。これに従って作成され公文書には、一般には使用されない表現や独特の用語なども多く含まれている。内部であれば問題はないが、それと同様に作成された文書を住民に向けて発した場合、これは住民が わかりにくいと感じる要因のひとつとなる。 また、文章が複雑で情報が多いこともわかりにくさの原因の一つと考えられる。自治体から住民に向けて情報を発信する場合、正確に伝えること、公平に伝えること、確実に伝えることが重視される。そのため、法令や「公文書」の表現、用語を用い、必要な情報をすべて記すことで、情報の不備や間違いを回避し、苦情や問い合わせのリスクを抑えているものと考えられる。このことで、文章が複雑になったり、情報が多くなったりし、住民がわかりにくいと感じることにつながっている。 しかし、情報は、相手に理解されなければ伝えていないのと同じである。行政としての責務を果たせず、住民の信頼を低下させることにもなりかねない。 情報をわかりにくいまま発信することは、住民の生活だけでなく、業務の遂行にも影響を及ぼす。災害情報が行き届かなかったために適切な避難誘導ができなかったような例だけでなく、内容が理解しにくいための問い合わせの殺到、記載箇所のわかりにくさによる申請書類不備の続出などの例もある。このことにより、業務が増えたり、作業効率が低下したり、他の業務に支障が出たりする恐れもある。 また別の視点から見てみると、現在は住民が自治体を選ぶ時代といわれる。都市部における待機児童問題などに見られるように、よりよいサービスや生活環境を求めて住民は移動する。良いサービスを実施していても、サービスの存在やその内容を知ってもらわないと、住民から選ばれる可能性も低い。自治体が行政サービスを住民に提供するうえで、その内容をわかりやすく伝えることは、この点でも重要である。 これらのことを踏まえると、わかりやすい表現や語彙を用いた情報発信に努め、住民に確実に情報を伝えることは、今の自治体にとって必須の取組である。 2.多摩・島しょ地域の自治体によるわかりやすい情報発信の取組 この節では、「多摩・島しょ地域の自治体へのアンケート」の結果から多摩・島しょ地域の自治体の取組について述べる。「多摩・島しょ地域の自治体へのアンケート」は、以下の3種類を行っている。(詳細は「第1章3.調査の概要(1)多摩・島しょ地域の自治体へのアンケート」(5から6ページ)を参照) @39市町村の企画担当部署を対象とした「住民向け情報発信の全庁的な取組について」のアンケート(39件回収) A業務の中で住民に対して情報発信を行っている 10分野の担当部署を対象とした「住民向け情報発信の各部署における取組について」のアンケート(408件回収) B10分野の担当部署が具体的に発信している情報を対象とした「取組の内容について」のアンケート(1,037件回収) (1)の項では、@とAのアンケート結果から、全庁的な取組と各担当部署での取組の現状を整理し、取り組むきっかけや分野ごとの傾向などを把握した。 (2)の項では、Bのアンケート結果から、文章を作成する際に心がけていることなどを整理し、取組の具体的な内容や分野ごとの傾向などを把握した。 (3)の項では、@とAとBのアンケート結果の主に自由回答から、自治体職員が課題と感じていることを整理した。 (1)わかりやすい情報発信の取り組み状況 @9割の部署で取り組んでいるが、全庁の統一的な基準がある市町村はわずか1/3 多摩・島しょ地域の39 市町村のうち、「全庁の基本的な方針や統一的な基準がある」自治体は13 市町村、「全庁的な方針や基準はないが、個別に基準等を作成している部署がある」自治体は4市町村であった【図表2−1】。一方、部署ごとでは、「全庁の基本的方針や統一的な基準にそって取り組んでいる」部署が45.6%、「各担当者が独自に工夫して取り組んでいる」部署が39.0%など、わかりやすい情報発信に取り組んでいる部署は9割であった【図表2−2】。 実際に情報発信を行う各担当部署ではわかりやすい情報発信に取り組む姿勢があるものの、全庁をあげての取組に至っている市町村は少ないことがわかる。 図表2−1 わかりやすい情報発信の全庁的な取り組み状況 [全庁/単一回答] <円グラフ> 全庁の統一的な基準がある13自治体33.3% 複数部署にわたる横断的な方針や基準がある0自治体- % 全庁的な基準はないが、個別に基準等を作成している部署がある4自治体10.3% その他5自治体12.8% 各部署での独自の取組を把握していない7自治体17.9% 方針や基準などはない10自治体25.6% サンプル数=39 わかりやすい情報発信に取り組んでいる・計 22自治体56.4% (この図表終わり) 図表2−2 わかりやすい情報発信の各部署取り組み状況 [各部署/単一回答] <円グラフ> 全庁の統一的な基準にそって取り組んでいる45.6% 部署独自の基準にそって取り組んでいる5.6% 各担当者が独自に工夫して取り組んでいる39.0% 取り組んでいない9.6% 無回答0.2% サンプル数=408 わかりやすい情報発信に取り組んでいる・計 90.2% (この図表終わり) A取り組みにくい分野は、制度が複雑な分野や専門性が高い分野 分野別にみると、「子どもの福祉や保育に関する分野」、「地域行事や生涯学習に関する分野」、「市民生活に関する分野」では「全庁の基本的方針や統一的な基準にそって取り組んでいる」部署が5割を超えている。また、「市町村行政に関する分野」や「防犯や防災に関する分野」では「部署独自の基準にそって取り組んでいる」部署の割合が他分野よりも多く、「全庁の基本的方針や統一的な基準にそって取り組んでいる」と合わせて、基準にそった取組を行っている。このような分野では、積極的な取組を行っているといえる。一方で、「税や国民健康保険に関する分野」や「保健・健康に関する分野」では「各担当者が独自に工夫して取り組んでいる」部署が5割を超えており、基準にそった取組よりも、担当職員の判断による取組が行われている【図表2−3】。 制度が複雑な分野や専門性が高い分野では、基準にそったわかりやすい情報発信に取り組みづらい傾向があることがうかがえる。 図表2−3 わかりやすい情報発信の行政分野別取り組み状況 [各部署/単一回答] <分野ごとの帯グラフ> 市町村行政に関する分野 (n=51) 地域行事や生涯学習などに関する分野 (n=47) 防犯や防災に関する分野 (n=34) 市民生活に関する分野 (n=54) 子どもの福祉や保育に関する分野 (n=41) 教育に関する分野 (n=42) 保健・健康に関する分野 (n=35) 福祉に関する分野(n=48) 税や国民健康保険に関する分野 (n=50) その他の分野 (n=6) 分野ごとに、全庁の基本的方針や統一的な基準にそって取り組んでいる、部署独自の基準にそって取り組んでいる、各担当者が独自に工夫して取り組んでいる、取り組んでいない、無回答の構成比を示す また「取り組んでいる・計」として、「全庁の基本的方針や統一的な基準にそって取り組んでいる」「部署独自の基準にそって取り組んでいる」「各担当者が独自に工夫して取り組んでいる」の合計 の数値も表示 (この図表終わり) Bマニュアル作成と庁内研修は全庁をあげた取組、指導や教育は部署ごとの取組 わかりやすい情報発信に向けた取組の内容をみると、全庁的には「文章作成のマニュアル等の整備」(13市町村)や「庁内で職員だけの研修」(12市町村)、「部署内での指導や教育」(11市町村)などが多く【図表2−4】、部署ごとでは「部署内での指導や教育」(45.7%)、「文章作成のマニュアル等の整備」(28.8%)、「他地域や他分野のマニュアル等を参考にする」(25.8%)などが多い【図表2−5】。 マニュアル等の整備や庁内での研修などは全庁をあげた取組であり、マニュアル等を参考にした指導や教育は部署ごとの取組である。 図表2−4 方針や基準を浸透させるための取組内容 [全庁/複数回答] <取組内容の構成比を示した棒グラフ> ※対象は、回答のあった 39自治体中わかりやすい情報発信に取り組んでいると回答した 22自治体 文書作成等のマニュアル等を整備している 59.1% 庁内で職員だけの研修(外部講師なし)を実施している 54.5% 部署内での指導や教育に努めている 50.0% 庁外の研修等へ職員を派遣している 31.8% 外部専門家を招き指導を受けている 18.2% 外部機関や第三者機関による評価を得ている 9.1% その他 9.1% 特別な取組は行っていない 4.5% わからない - 無回答 - (この図表終わり) 図表2−5 取組を行っている部署における取組内容 [各部署/複数回答] <取組内容の構成比を示した棒グラフ> ※対象は、回答のあった 408部署のうちわかりやすい情報発信に取り組んでいると回答した 368部署 部署内での指導や教育に努めている 45.7% 文章作成のマニュアル等を整備している 28.8% 他地域や他分野のマニュアル等を参考にしている 25.8% 庁内で職員だけの研修(外部講師なし)を実施している 14.9% 庁外の研修等へ職員を派遣している 12.5% 外部機関や第三者機関による評価を得ている 2.7% 外部専門家を招き指導を受けている 2.4% その他 16.8% 無回答 4.6% (この図表終わり) 図表2−5の別表 「その他」の主な内容[各部署/自由記述] ※各項目において3つずつ意見を掲載。 【複数の担当者での確認作業:14件】 ・担当職員間でのディスカッション ・係内において、内容のダブルチェックを行っている。 ・関係職員で表現の分かりやすさ等に付いて確認をしている。 【外部(過去)の基準・出版物を参考にする:12件】 ・他部署や過去の作成物を参考に、わかりやすい表現を心掛けている ・他自治体のホームページや広報を参考にしている。 ・広報紙の校正は、時事通信社の「記事スタイルブック」、第一法規の「新表記辞典」を参考にしている 【全庁の基準に沿って作成:10件】 ・広報の基本ルールや文書事務の手引(いずれも庁内の規程)に沿うようにしている ・全庁で使用しているハンドブックに沿って作成・発信している。 ・文書管理規定に則り、わかりやすい表現、見やすい字体、大きさとしている。 【表現・大きさなどを工夫:5件】 ・文字を大きくしたり、図や表で読みやすくしている。 ・文字を大きくしたり、内容を理解しやすいよう図を用いたりすることに心がけている。 ・各案件ごとにわかりやすく表現している 【他部署と連携:4件】 ・広報課への相談、指導を求める ・広報課の指示に従っている。ホームページ作成研修を受講している。 ・情報発信部署と連携し取り組んでいる。 【各担当者が工夫:3件】 ・各担当者が独自に取り組んでいるが、その内容については取りまとめていない。 ・情報伝達が必要な箇所に対して独自に追加配信、改善 ・わかりやすい表現となるよう、各担当が判断し、工夫している。 【外部機関と連携:3件】 ・消費生活センター運営協議会と文章表現等の見直しを行っている。 ・過去に実施していた委託業者との勉強会で学んだことを活用している。 ・ボランティアの市民からなる運営協議会と協働で事業を進めている。 【その他:10件】 ・市民参加により内容を充実させている。 ・基準は作成していないが、市民に伝わりやすいよう毎年見直しを行っている。 ・シティプロモーション研修への参加 (この図表終わり) C取組のきっかけは、住民からの問い合わせや社会的な関心の高まりなど 全庁的な取組を行うに至った一番の理由は、「部署の方針として決めたから」(4市町村)、「首長の施政方針等に盛り込まれているから」(4市町村)、「社会的な関心が高まっているから」(3市町村)であった【図表2−6】。一方、部署ごとでは、「住民等からの問い合わせが多いから」(37.2%)、「社会的な関心が高まっているから」(20.9%)であった【図表2−7】。住民等からの問い合わせが多いことが理由となっている分野は、「税や国民健康保険に関する分野」、「市民生活に関する分野」、「保健・健康に関する分野」などであった【図表2−8】。 情報を発信する担当者が、現場の日々の業務において住民と接する中でわかりやすい情報発信の必要性を感じたことが、取組のきっかけとなっている。 図表2−6 全庁的な方針や基準等を作成するに至った一番の理由 [全庁/単一回答] <円グラフ> 部署の方針として決めたから 4自治体 18.2% 首長の施政方針等に盛り込まれているから 4自治体 18.2% 社会的な関心が高まっているから 3自治体 13.6% 住民等からの問い合わせが多いから 2自治体 9.1% その他 4自治体 18.2% 特に理由はない、わからない 5自治体 22.7% サンプル数=22 (この図表終わり) 図表2−7 部署において情報発信に努める一番の理由 [各部署/単一回答] <円グラフ> 住民等からの問い合わせが多いから37.2% 社会的な関心が高まっているから20.9%部署の方針として決めたから6.8% 首長の施政方針等に盛り込まれているから6.8% その他23.6% 特に理由はない、わからない3.0% 無回答1.6% サンプル数=368 (この図表終わり) 図表2−7の別表 「その他」の主な内容[各部署/自由記述] ※各項目において3つずつ意見を掲載。 【行政に関する情報をきちんと伝えるため:25件】 ・市政に関してより理解を深めてもらうため ・制度や事業の内容をよく知っていただくため。 ・多くの方に市政に関心をもってもらいたいから。 【事業を周知し、多くの方の参加を促すため:14件】 ・より多くの市民にイベント、講座等に参加いただきたいから ・施設やイベント等の情報を発信することで、制度の活用やイベントの参加を促すため ・行政情報を、住民に分かりやすく伝えることにより、理解を求めるとともに、必要な行動を促すため。 【住民にわかりやすく伝えることは当然の責務であるため:10件】 ・市民に分かりやすく伝えるために当然の責務 ・課税は市民に負担を課す行為でもあるので、その根拠は市民から見てわかりやすく明確でなくてはならないため。 ・分かりやすい情報発信が責務と考えているから 【高齢者・障害者への配慮が必要なため:10件】 ・障害のある方への配慮 ・障害者にわかりやすく理解してもらうため ・高齢者が読みやすいようにといった配慮。 【制度への理解を深め適切な運営へつなげるため:9件】 ・滞納の解消及び滞納整理を推進するため ・納付方法について市民への理解を促し、税収の安定的な確保につなげるため。 ・保育所の入所の手続き等について、住民にわかりやすく説明するため 【施政方針等に盛り込まれているため:6件】 ・文書管理規則に定めがあるため ・全庁的な方針 ・自治基本条例において、市民に対し、市政情報をわかりやすく公表することが定められているから。 【住民サービス向上のため:5件】 ・住民サービスにつながるため。 ・サービスの向上と業務の効率化の両面のメリットがあるから ・市民サービスの向上のため 【住民生活の安心に直結する内容であるため:5件】 ・市民の安全安心に係る内容のため ・市民の生命と財産を守るために正確な情報を迅速に伝える必要があるため ・住民生活に直結する内容であるため 【その他:3件】 ・ウェブアクセシビリティ(高齢者や障害者など心身の機能に制約のある人でも、年齢的・身体的条件に関わらず、ウェブで提供され ている情報にアクセスし利用できること)及びユーザビリティへの配慮のため ・幅広い世代の方に当市の魅力をPRするため ・消防という特殊な分野の為、専門用語等が多いため。 (この図表終わり) 図表2−8 行政分野別 わかりやすい情報発信に努める一番の理由 [各部署/単一回答] <分野ごとの棒グラフ> 市町村行政に関する分野(47) 地域行事や生涯学習などに関する分野(40) 防犯や防災に関する分野(31) 市民生活に関する分野(51) 子どもの福祉や保育に関する分野(40) 教育に関する分野(35) 保健・健康に関する分野(33) 福祉に関する分野(41) 税や国民健康保険に関する分野(45) 以上の分野ごとに以下の回答の構成比を示す 住民等からの問い合わせが多いから 社会的な関心が高まっているから 部署の方針として決めたから 首長の施政方針等に盛り込まれているから その他 特に理由はない、わからない 無回答 (この図表終わり) (2)わかりやすい情報発信の取組内容 @全体に周知・理解や行動を促す情報が5割、個人に行動を働きかける情報が1割 発信している情報の特性は、「全体に対して、周知・理解を促す」情報が31.9%、「全体に対して、行動を促す」情報が19.9%、「特定の個人に向けて、必須の行動を働きかける」情報が10.9%であった【図表2−9】。 図表2−9 発信している情報の特性 [具体例/単一回答] <3列×3行の表> サンプル数 1,031 個人や世帯などを特定している情報 × 対象者に対し、行動等を伴わず理解を促す(周知させるもの)5.1% 個人や世帯などを特定している情報 × 対象者に対し、行動を促す(参加を促進させるもの)3.9% 個人や世帯などを特定している情報 × 対象者に対し、必須の行動を働きかける(手続き等が必要なもの)10.9% 性別や年齢・地域など、ある属性を持つ不特定多数に向けた情報 × 対象者に対し、行動等を伴わず理解を促す(周知させるもの) 5.8% 性別や年齢・地域など、ある属性を持つ不特定多数に向けた情報 × 対象者に対し、行動を促す(参加を促進させるもの)10.3% 性別や年齢・地域など、ある属性を持つ不特定多数に向けた情報 × 対象者に対し、必須の行動を働きかける(手続き等が必要なもの)5.0% 全体にむけて発信している情報 × 対象者に対し、行動等を伴わず理解を促す(周知させるもの) 31.9% 全体にむけて発信している情報 × 対象者に対し、行動を促す(参加を促進させるもの) 19.9% 全体にむけて発信している情報 × 対象者に対し、必須の行動を働きかける(手続き等が必要なもの) 6.7% (この図表終わり) A情報の発信手段は「ホームページ」と「広報誌」。個人に向けた情報は「通知」 情報の発信手段は、「公式ホームページ」が71.2%、「広報誌」が61.5%、「郵便等による通知」が26.6%であった。「ある属性を持つ不特定多数に対して、必須の行動を働きかける」情報や「全体に対して、必須の行動を働きかける」情報、「全体に対して、行動を促す」情報、「ある属性を持つ不特定多数に対して、行動を促す」情報などは「公式ホームページ」や「広報誌」を活用する傾向にある。また「特定の個人に向けて、必須の行動を働きかける」情報や「特定の個人に向けて、行動を促す」情報、「特定の個人に向けて、周知・理解を促す」情報、「ある属性を持つ不特定多数に対して、必須の行動を働きかける」情報は「郵便等による通知」を活用する傾向にある。【図表2−10】。 図表2−10 情報の特性別 発信媒体 [具体例/複数回答] <図表2-9の9件の特性ごとに発信媒体の構成比を示す棒グラフ> ( )内はサンプル数 特定の個人に向けて、必須の行動を働きかける(113) 特定の個人に向けて、行動を促す(40) 特定の個人に向けて、周知・理解を促す(53) ある属性を持つ不特定多数に対して、必須の行動を働きかける(52) ある属性を持つ不特定多数に対して、行動を促す(107) ある属性を持つ不特定多数に対して、周知・理解を促す(60) 全体に対して、必須の行動を働きかける(69) 全体に対して、行動を促す(206) 全体に対して、周知・理解を促す(331) 以上の特性ごとに以下の回答の構成比を示す 公式ホームページ 広報誌 郵便等による通知 SNS(フェイスブック・ツイッターなど) メールマガジン 防災無線 自治会等の回覧板 その他無回答 (この図表終わり) B取組内容は、「文章の削減」「専門用語や行政用語の書き換え」「デザインの工夫」 文章を作成する際に工夫していることは、「文章を簡潔にしている」(51.7%)、「情報量が過大とならないように、情報を整理・選択している」(49.7%)、「読みやすいレイアウトやデザインを工夫している」(40.3%)、「難しい制度等の内容は、平易な表現に改めるよう注意している」(34.7%)、「使う用語は、専門用語、カタカナ語、略語等を避けるように注意している」(31.1%)であった【図表2−11】。 「情報を整理・選択」することで文章の削減に取り組んだり、専門用語や行政用語を平易な表現に書き換えたり、見やすいデザインに努めたりしている。 C制度が複雑な分野や専門性が高い分野は「平易な表現」に努めている 行政の分野別にみると、「子どもの福祉や保育に関する分野」や「税や国民健康保険に関する分野」は「難しい制度等の内容は、平易な表現に改めるよう注意している」傾向があり、「地域行事や生涯学習などに関する分野」「保健・健康に関する分野」は「読みやすいレイアウトやデザインを工夫している」傾向がある【図表2−11】。 難しい制度の情報や専門性が高い情報などは平易な表現を工夫しており、生活情報や住民サービス情報などは見やすさなどを工夫しているといえる。 図表2−11 文章を作成する際に工夫していること [具体例/複数回答] <行政分野ごとに工夫していることの構成比を示す棒グラフ> ( )内はサンプル数 市町村行政に関する分野(128) 地域行事や生涯学習などに関する分野(120) 防犯や防災に関する分野(84) 市民生活に関する分野(136) 子どもの福祉や保育に関する分野(109) 教育に関する分野(104) 保健・健康に関する分野(90) 福祉に関する分野(123) 税や国民健康保険に関する分野(129) 以上の分野ごとに以下の回答の構成比を示す 文章を簡潔にしている情報量が過大とならないように、情報を整理・選択している 読みやすいレイアウトやデザインを工夫している 難しい制度等の内容は、平易な表現に改めるよう注意している 使う用語は、専門用語、カタカナ語、略語等を避けるよう注意している 重要な情報が優先的に伝わるよう、載せる情報の順位を編集している 大事な情報は、例示するなど具体的に書いている 命令調や押し付けがましい表現はさけている 文字を大きくしている 色弱者に配慮し、色彩を工夫している その他 特にない 無回答 (この図表終わり) (3)わかりやすい情報発信に取り組むにあたって課題と感じていること @全庁的な展開ができない理由は、「各部署で実施」「技術的に困難」「体制が整わない」 取組が全庁的に展開できていない理由は、「それぞれの部署で工夫をしているため」「文書を作成する各課の判断に任せているため」など『各部署に任せているので必要ない』ことが多く挙げられている。また、「発信する内容が様々であり、全庁的な基準の設定が困難である」など『統一的な基準を作成するのが技術的に難しい』ことや、「全庁的に取り組む部署がない」「マンパワー不足で全庁的取組に至るまでの余力がない」など『庁内体制が整っていない』ことなども挙げられる【図表2−12】。 図表2−12 取組が全庁的に展開できていない理由 [全庁/自由記述] ※各項目において3つずつ意見を掲載。 【各部署に任せているので必要ない:7件】 ・各分野で様々な対象者に内容を伝えるにあたり、それぞれの部署で工夫をしているため。 ・文書を作成する各課の判断に任せているため。 ・各担当の意欲に任せているため 【統一的な基準を作成するのが技術的に難しい:6件】 ・媒体が市報とSNSでは表現方法が異なり、対象者が高齢者、障害者、子ども等でもそれぞれ表現方法が異なり、統一した基準を設けることが難しいため。 ・表現の問題は、正解がないうえ、わかりやすく表現してみようとマニュアルで訴えても、国の制度などを説明する際は、簡単な表現ができない状況もあり得る。そのため、なかなかパターン化することができず定着も難しい。わかりやすい表現の「心がけ」という点での呼びかけになってしまうことになる。 ・住民向けの分かりやすい情報発信の必要性に対する認識が、各部署で異なるため。 【庁内体制が整っていない:4件】 ・「わかりやすい情報発信」を全庁的に取り組む部署がない。 ・関連部署が多く、取りまとめが難しいため。 ・マンパワー不足で全庁的取組に至るまでの余力がない 【その他:5件】 ・町が行っている情報発信について、受け手である住民の評価やニーズに関して全庁的に把握していないため、情報発信に関する課題が明確になってない。 ・ホームページや広報等による情報発信の手段については、統一されているが、情報発信の内容について統一的な発信内容とする取り組みにかかるきっかけがなかったため。 ・広報・公聴係が広報の作成および防災無線で情報発信をしており、また、各課からの情報をまとめているため全庁の基本的な方針や統一的な基準に近い役割をしている。 (この図表終わり) A全庁的に展開するには、「職員意識の向上」「マニュアルの整備」「体制の整備」が必要 全庁をあげて伝わりやすい情報発信を目指すには、「わかりやすい情報発信の必要性について、全職員の意識付けを継続的に行う」など『職員の意識を向上』させることが必要なこととして挙げられた。また、文章作成の『基準やマニュアルの作成』や「中心となり取り組む部署を設置する」など推進していくための『庁内体制の整備』も必要なこととして挙げられている【図表2−13】。 図表2−13 全庁的にわかりやすい情報発信に取り組むための課題 [全庁/自由記述] ※各項目において3つずつ意見を掲載。 【職員意識の向上:8件】 ・住民に対して伝わりやすい情報発信が必要であるということについて、全庁的な意識共有を図ること。 ・適切な文書処理が行われるよう公文書作成要領を定めているが、多くの職員が公文書作成要領に従い公文書の作成を行なえていない。公文書作成要領を十分に理解し、適切な公文書を作成できる職員の育成が課題である。 ・わかりやすい情報発信の必要性について、全職員の意識付けを継続的に行っていく必要がある。 【基準・マニュアル作成と職員への周知:7件】 ・分かりやすい印刷物を発行することで市民からの問合せ件数を減らすことなど、ユニバーサルデザインを活用した市民サービスの向上と業務の効率化を目指し、ユニバーサルデザインガイドラインの見直しを含め、検討している。 ・先進的な自治体がマニュアル等を定めて行っている、情報発信におけるユニバーサルデザインの視点を取り入れた対応(全ての人が見やすい文字の大きさ、文字間隔、書体等)が課題と考えています。 ・手に取ってもらえる広報誌、見に来てもらえるホームページを作成できるよう、全庁的に取り組むための研修や更なるマニュアル整備が必要。 【多様な受け手に応じた情報発信:6件】 ・さまざまな年齢・性別・状況の人に情報を伝えなければならないこと。 ・誰が、誰に向けて、どのように情報を発信していくのか、対象者に合わせた発信方法を工夫するなど全庁的な方針を構築し、「伝える情報」から、「伝わる情報」へと受け手がわかりやすく正しく理解できる情報を発信していく必要があります。 ・専門用語の使用を控えるなど、情報を受け取る側の市民の目線に立った情報発信が必要である。 【庁内体制の整備:3件】 ・住民向けの分かりやすい情報発信について、中心となり取り組む部署を設置するなど、推進するための体制作りが課題であると考えられる。 ・全庁的、又は横断的な取り組みを推進する組織が定まっていない。 ・情報発信に関する全庁的な理解と、課題点等の共有化を行うことができる体制整備。 【その他:6件】 ・市のホームページや市報等について,興味を持って見ている住民は少数であるため,住民に興味を持ってもらうような仕掛けが必要である。 ・急速な高齢化の進行、新聞購読の低下、情報発信の手段の多様化などで、必要な情報が必要な市民に行き届かなくなっている。 ・ホームページを始め、SNSなどの新たな手段による情報発信を図りつつ、ネット環境がない市民が不利益にならないよう引き続き配慮したい。 (この図表終わり) B部署での取組の課題は、「情報を取捨選択できない」「やり方がわからない」 部署での取組の課題は、「重要な情報が多く、減らせない」、「説明不足の指摘を恐れて、どうしても発信情報量が多くなる」など『情報量が多く取捨選択が難しい』ことが挙げられている。また、「広範囲に受け入れられる情報の作成が難しい」、「法律用語や専門用語が難しく、わかりやすく表現できない」などわかりやすい情報発信のやり方がわからないことや「担当者が多く、表現方法を統一させることが難しい」ことなども挙げられる。【図表2−14】。 図表2−14 各部署でわかりやすい情報発信に取り組むための課題 [各部署/自由記述] ※各項目において3つずつ意見を掲載。 【すべての住民に伝える難しさ:34件】 ・限られたスペース内で、全ての市民の方に同じ理解をしていただくための、表現の仕方 ・簡潔にかつ、どの方にもわかりやすく、漏れがなく伝えること。 ・情報を受け取る側の感性が個々異なるため、広範囲に受け入れられる情報の作成が困難である。 【法律用語・専門用語・制度の難しさ(書き換えの難しさ):21件】 ・税制度については、複雑な内容が多く、個人ごとに必要な情報が違うため、記載する情報を選定するのに苦慮する。 ・税法上の専門用語を簡潔かつ平易に説明すること。 ・専門用語が多数あり、専門知識のない市民が内容を理解できない場合が多いので、内容を簡潔に分かり易く説明することが課題である。 【職員間の意識・技術の差:19件】 ・職員によって取り組みにばらつきがあること。 ・課題は共通していることが多いのだが、事業が多く担当者もたくさんいるので、わかりやすい表現方法を統一させることが難しい。 ・共同通信社の記者ハンドブックを担当職員しか持っていないため、職員全体に浸透していない。 【情報の伝え方に工夫が必要:17件】 ・情報紙や独自の子育て情報サイト等、媒体はそろっているため、今後はわかりやすい文章やレイアウトなど中身の質を上げることが重要。 ・広報媒体が限られており、市民全体への周知に結びつきづらい部分がある。 ・市の広報誌やホームページをご覧いただけていない市民の方にどのように情報を届けるか。 【情報の簡潔さと正確さのバランスをとる難しさ:11件】 ・国の制度は、必ずしも市民にとって理解し易い文書が使用されていないため、正確に情報を伝えることにより、市民にとって理解の難しい内容となってしまうこともある。(給付担当) ・行政表現を使用すると難解となることがある一方、わかりやすく口語表現とすると、正確な情報や意味が伝わりづらくなることがある。 ・情報の分かりやすさと、正確な情報を伝えることの両立。(誤解を完全になくすためには、極端には契約書の約款のような詳細な文書が必要となりますが、情報は伝わりにくくなります) 【情報量の多さ・取捨選択の難しさ:10件】 ・理解してもらうために文章が多くなりがちだが、なるべく簡素にする方法が課題。 ・一定の制約(紙面スペース、予算等)の範囲内で、受け手の多様なニーズに応えるための情報量の判断と発信する情報の取捨選択。 ・発信する情報の、取捨選択が大変重要。住民からの反響に大きく関わるため。 【全庁的にとりまとめる部署が不在、統一基準が必要:5件】 ・内容が複数の課にまたがるため、言葉づかいや語句の使い方など統一が必要。 ・全庁統一的に取り組むべき事項でもある ・部署内での工夫に留まるため、全庁的にチェックする部署がないことが課題である。 【効果の測定しにくさ:4件】 ・取り組みの効果が測定しにくい。 ・実際に市民に分かりやすく伝わっているのかどうか結果の把握が難しい。 ・情報量が多いため、十分に市民に伝わっているかの判断が難しく、できていない。 【対応に人手が必要:3件】 ・現状の取り組み以上のことをするには、財政・マンパワーの面で課題がある。 ・時間的な制約(人員不足) ・点字やルビ振り等、資料作成に時間と労力がかかる。 【情報伝達の迅速性:2件】 ・「防災・安全メール」は、警察や気象庁等からの情報を市民に伝えるため、配信元の情報を受信してから、安全メールを配信するまでのタイムラの改善が課題である。 ・観光の情報発信においては、即時に発信するべき情報があるため、その掲載に時間がかかってしまうと情報の重要性が低まってしまうこと。 【その他:20件】 ・犯罪の発生状況なので、個人を特定されないようにしないといけない。また、同種被害に遭わないようにできる限り具体的に記載しないといけない。 ・市報では同じ内容を複数回掲載できない為、情報を発信する時期が大切になってくること。 ・委託している事業が多いため、委託先が作成したものを修正するのに時間を要する。 (この図表終わり) C取り組まない理由は、「必要性を感じていないから」 部署で取り組んでいないのは、「理由は特にない」(30.8%)や、「現状で十分であるため」(23.1%)など、必要性を感じていないことが理由として挙げられている。一方、「全庁統一的に取り組むべき事項であるため」(25.6%)との理由も挙げられる【図表2−15】。 今後については、「取り組む意向はあるが、部署内での検討には至っていない」(41.0%)、「今後取り組むために、部署内で検討中である」(2.6%)など、取組に前向きな部署もある一方で、「取り組む意向はない」部署も30.8%であった【図表2−16】。わかりやすい情報発信に取り組むには、担当職員に必要性を感じてもらうことが大事であるといえる。 図表2−15 取り組んでいない部署における、取り組んでいない理由 [各部署/単一回答] <円グラフ> ※対象は、回答のあった408 部署中わかりやすい情報発信に取り組んでいないと回答した39 部署 全庁統一的に取り組むべき事項であるため25.6% 現状で十分であるため23.1% 取り組み方がわからないため10.3% 忙しいため5.1% その他5.1% 理由は特にない30.8% サンプル数=39 (この図表終わり) 図表2−16 取り組んでいない部署における今後の意向 [各部署/単一回答] <円グラフ> ※対象は、回答のあった408 部署中わかりやすい情報発信に取り組んでいないと回答した39 部署取り組む意向はあるが、部署内での検討には至っていない0.0% 取り組む意向はあるが、部署内での検討には至っていない41.0% 取り組む意向はない30.8% 今後取り組むために、部署内で検討中である2.6% 現在、取り組みに向けて基準等を作成中である- % わからない25.6% サンプル数=39 (この図表終わり) 3.多摩・島しょ地域の住民の情報入手の状況 この節では、「多摩・島しょ地域の住民へのアンケート」の結果から、多摩・島しょ地域の住民の情報入手の現状と評価について述べる。「多摩・島しょ地域の住民へのアンケート」は、以下の2種類を行っている。(詳細は「第1章3.調査の概要(2)多摩・島しょ地域 の住民へのアンケート」(7から8ページ)を参照) @事前調査:20歳以上の男女を対象とした「情報入手の実態について」のアンケート(11,489件回収) A本 調査:事前調査の回答者のうち「1年以内に市町村からの情報を入手した人」を対象とした「入手している情報の評価について」のアンケート(1,040件回収) (1)の項では、情報入手の現状とわかりやすさへの評価を整理し、わかりにくいと感じている情報の特徴を把握した。 (2)の項では、情報を得にくい媒体や理解しにくい通知文の特性を整理し、わかりにくいと感じる理由を把握した。 なお、このアンケートはインターネット調査会社のモニターを対象に Web上での調査を行ったため、母集団は多摩・島しょ地域に住むモニター会員に限られる。そのため、回答者には、インターネットで情報を入手することが困難な高齢者や障害者等の当事者は含まれていない。そこで、高齢者や障害者等については、支援団体等へのヒアリング調査を実施し、次節で情報入手の現状と問題点を整理した。 (1)住民の情報入手の現状とわかりやすさの評価 @わかりにくいと感じている人は1/4。わかりやすい情報発信に向けた取組が必要 事前調査の対象者のうち、「住んでいる市町村からの情報やお知らせなどは一度も受け取ったことがない」人は14.0%( 1,604人)であった【図表2−17】。以下、この 1,604人を除いた9,885人を対象に分析を行う。 1年以内に自治体からの情報を入手した人は全体の9割弱であり【図表2−18】、入手した情報の種類は、「広報誌」(74.2%)、「通知書」(35.9%)、「公式ホームページ」(30.4%)など、平均で 2. 4種類の情報を入手している【図表2−19】。わかりやすいと感じている人は多いものの、わかりにくいと感じている人も全体の1/4の割合でいる【図表2−20】。4人に1人がわかりにくいと感じており、よりわかりやすく情報を発信していく取組が必要である。 図表2−17 住んでいる市町村からの情報の受取状況 [事前調査/単一回答 ] <円グラフ> 住んでいる市町村からの情報やお知らせなどを受け取ったことがある 9,885人 86.0% 住んでいる市町村からの情報やお知らせなどは一度も受け取ったことがない 1,604人 14.0% サンプル数=11,489 (この図表終わり) 図表2−18 住んでいる市町村からの1年以内の情報の受取状況 [事前調査/単一回答] <円グラフ> 最近1年以内に住んでいる市町村からの情報を見た 8,681人 87.8% 最近1年以内に住んでいる市町村からの情報を見ていない 1,204人 12.2% サンプル数=9,885 (この図表終わり) 図表2−19 直近 1年間の情報入手の現状 [事前調査/複数回答] <棒グラフ> 広報誌を読んだ 74.2% あなたや同居者に対する通知書が届いた(給付金通知や納税通知、検診・健康診断通知、選挙など) 35.9% 公式ホームページを見た 30.4% 回覧板を見た 22.1% 役所の窓口で申請手続き等を行った 18.0% 生活情報冊子を見た(暮らしの便利帳など) 11.7% 街なかにある情報掲示板で情報を見た 8.7% メールマガジンやSNSで入手した(防災防犯情報など) 7.3% その他 0.2% 最近1年以内にお住まいの市町村からの情報を見ていない 12.2% 平均情報入手数(種類)2.4 ※「平均情報入手数(種類)」は0種類(最近1年以内にお住いの市町村からの情報を見ていない)を除いて集計 (この図表終わり) 図表2−20 住んでいる市町村からの情報のわかりやすさ [事前調査/単一回答] <円グラフ> わかりやすい、読みやすいと感じている 17.5% どちらかというとわかりやすい、読みやすいと感じている 57.9% どちらかというわかりにくい、読みにくいと感じている 20.2% わかりにくい、読みにくいと感じている 4.3% サンプル数=9,885 「わかりにくい」の計 24.6% (この図表終わり) A情報に接する頻度の低い人や若い人がわかりにくいと感じている わかりにくいと感じている人は、情報入手の数が少ないほど多い傾向がある【図表2−21】。 年代が高いほど入手した情報の数は多く、20歳代の平均は 2.1種類に対し、60歳以上は 2.7種類であった。わかりにくいと感じている人をみると、20歳代が28.5%であるのに対し、60歳以上では19.4%であった【図表2−22】。情報を多く入手している高齢者のほうがわかりにくさを感じていない。 図表2−21 情報入手数別 わかりやすさ [事前調査/単一回答] <普段接している行政情報の数ごとに、わかりやすさの感じ方の構成比を示す帯グラフ> 普段接している行政情報の数 最近1年以内にお住まいの市町村からの情報を見ていない (n=1,204) 1種類 (n=3,412) 2種類(n=2,064) 3種類 (n=1,367) 4種類 (n=876) 5種類以上(n=962) 全体 (n=9,885) 以上の数ごとに以下の回答の構成比を示す わかりやすい、読みやすいと感じている どちらかというとわかりやすい、読みやすいと感じている どちらかというとわかりにくい、読みにくいと感じている わかりにくい、読みにくいと感じている (この図表終わり) 図表2−22 年代別 直近1年間の入手した情報 [事前調査/複数回答] <年代ごとに入手した情報の構成比を示す棒グラフ> ( )内はサンプル数 全体(9,885) 20歳代(889) 30歳代(1,810) 40歳代(2,912) 50歳代(2,265) 60歳以上(2,009) 以上の年代ごとに以下の回答の構成比を示す 広報誌を読んだ あなたや同居者に対する通知書が届いた(給付金通知や納税通知、検診・健康診断通知、選挙など) 公式ホームページを見た 回覧板を見た 役所の窓口で申請手続き等を行った 生活情報冊子を見た(暮らしの便利帳など) 街なかにある情報掲示板で情報を見た メールマガジンやSNSで入手した(防災防犯情報など) その他 最近1年以内にお住まいの市町村からの情報を見ていない <年代別平均情報入手数(種類)の表> 全体 2.4 20歳代 2.1 30歳代 2.3 40歳代 2.3 50歳代 2.3 60歳以上 2.7 <年代別わかりにくいと感じている人の構成比の表> 全体 24.6% 20歳代 28.5% 30歳代 26.0% 40歳代 24.8% 50歳代 26.2% 60歳以上 19.4% ※「わかりにくい・計」:受け取っている行政情報が「わかりにくい、読みにくいと感じている」「どちらかというとわかりにくい、読みにくいと感じている」の合計 (この図表終わり) Bわかりにくい情報は、制度が複雑な情報や専門用語が多い情報 1年以内に情報を受け取っている人のうち、普段入手している行政情報は、「市民生活に関する情報」(73.6%)、「市町村行政に関する情報」(70.1%)、「地域行事や生涯学習などに関する情報」(61.3%)などが多く【図表2−23】、入手している行政情報数の平均は 4.3種類であった【図表2−24】。わかりやすいと感じている分野は、「地域行事や生涯学習などに関する情報」(87.4%)や「防犯や防災に関する情報」(86.5%)などであった。 一方、わかりにくいと感じている分野は、「税や国民健康保険に関する情報」(43.1%)や「福祉に関する情報」(32.3%)などであった【図表2−25】。制度が複雑な情報や専門用語が多い情報は、わかりにくいと感じている人が多い。 図表2−23 普段自治体から入手している行政情報の種類 [本調査/複数回答] <年代別に入手している行政情報の分野の構成比を示す棒グラフ> 市民生活に関する情報市町村行政に関する情報 地域行事や生涯学習などに関する情報 防犯や防災に関する情報 保健・健康に関する情報 税や国民健康保険に関する情報 福祉に関する情報 子どもの福祉や保育に関する情報 教育に関する情報 その他 (この図表終わり) 図表2−24普段自治体から入手している行政情報の種類数 [本調査/単一回答] <入手している情報の種類数の構成比を示す棒グラフ> (この図表終わり) 図表2−25 行政分野別 情報のわかりやすさ [本調査/単一回答] <行政分野ごとにわかりやすさの感じ方の構成比を示す棒グラフ> ( )内はサンプル数 全体 (n=1,040) 市町村行政に関する情報 (n=729) 地域行事や生涯学習などに関する情報 (n=637) 防犯や防災に関する情報 (n=587) 市民生活に関する情報 (n=765) 子どもの福祉や保育に関する情報(n=285) 教育に関する情報 (n=195) 保健・健康に関する情報 (n=543) 福祉に関する情報 (n=288) 税や国民健康保険に関する情報(n=425) (この図表終わり) C30歳代が受け取る子育てに関する情報はわかりやすく伝わっていない 普段入手している行政情報の種類(行政分野)をみても、年代が高いほど多くの分野を受け取っている。20歳代の平均は 3.3種類に対し、60歳以上は 5.1種類であった。30歳代が入手している情報は「子どもの福祉や保育に関する情報」や「教育に関する情報」の割合が他の年代と比べて高く、60歳以上は「防犯や防災に関する情報」「保健・健康に関する情報」「福祉に関する情報」「税や国民健康保険に関する情報」の割合が他の年代と比べて高い【図表2−23】。わかりにくいと感じている人の割合は、多くの分野で 30歳代が全体よりも高い【図表2−26】。30歳代にとって必要な子育てに関する情報がわかりやすく伝わっていないと考えられる。 図表2−26 年代別 各行政情報のわかりにくさ [本調査/単一回答] <行政分野ごと、かつ年代ごとににわかりやすさの感じ方を示す表> (この図表終わり) コラム 担当者の気付き【高齢者より 30歳代が困っている?!】 当初、高齢になる程文書は理解しにくいと感じるのでは、と考えていたのですが、結果は意外にも逆でした。 30歳代がここまで「わかりにくい」と感じているとは予想していませんでした。高齢の方は行政の文書に慣れざるを得なかったのでしょうか。仕事もしながら育児に奮闘している 30歳代は、短時間で読んでもすぐ理解できないと感じているのでしょうか。その年代別差異の理由は、今回の調査研究では詳しく追うことはできませんでしたが、考えさせられる結果でした。 (コラム終わり) (2)わかりにくい理由 @必要な情報を得にくい媒体は、「防災無線」「自治会等の回覧板」 住民が普段自治体から入手している情報媒体は、「広報誌」が92.8%、「公式ホームページ」が 59.3%、「自治会等の回覧板」が 33.8%、「郵便等による通知」が 28.9%であった【図表2−27】。必要な情報を得にくいと感じている情報媒体は、「防災無線」(51.0%)や「自治会等の回覧板」(34.9%)であった【図表2−28】。 図表2−27 普段自治体から入手している情報媒体の種類 [本調査/複数回答] <普段接している情報媒体の構成比を示す棒グラフ> 広報誌 92.8% 公式ホームページ 59.3% 自治会等の回覧板 33.8% 郵便等による通知 28.9% 防災無線 18.5% メールマガジン 12.0% SNS(フェイスブックやツイッターなど) 6.1% その他 1.0% (この図表終わり) 図表2−28 情報媒体別 情報の得やすさ [本調査/単一回答] <媒体ごとに情報の得やすさの構成比を示す棒グラフ> 広報誌 (n=965) 公式ホームページ(n=617) メールマガジン (n=125) SNS(フェイスブックやツイッターなど)(n=63) 自治会等の回覧板 (n=352) 防災無線 (n=192) 郵便等による通知 (n=301) その他 (n=10) 以上の媒体ごとに以下の回答の構成比を示す 必要な情報を得やすい どちらかというと必要な情報を得やすい どちらかというと必要な情報を得にくい 必要な情報を得にくい (この図表終わり) A理解しにくい通知文は、「保険に関する通知」「給付金等に関する通知」 住民が普段自治体から入手している通知文は、「納税通知」が56.3%、「健康診断等に関する通知」が55.4%、「各種手当・給付金等に関する通知」が32.2%であった【図表2−29】。理解しにくいと感じている通知文は、「介護保険や国民健康保険、後期高齢者医療保険に関する通知」(41.0%)や「各種手当・給付金等に関する通知」(31.3%)であった【図表2−30】。 図表2−29最近受け取った通知文の種類 [本調査/複数回答] <受け取った通知の種類の構成比を示す棒グラフ> 納税通知 56.3% 健康診断等に関する通知 55.4% 各種手当・給付金等に関する通知 32.2% 介護保険や国民健康保険、後期高齢者医療保険に関する通知 27.7% 子育て支援や小中学校入学に関する通知 12.6% その他の通知 1.7% 通知文は受け取っていない 17.0% (この図表終わり) 図表2−30 通知文種類別 理解しやすさ [本調査/単一回答] <通知文ごとに理解しやすさの構成比を示す帯グラフ> ( )内はサンプル数 納税通知 (n=585) 健康診断等に関する通知 (n=576) 各種手当・給付金等に関する通知 (n=335) 子育て支援や小中学校入学に関する通知(n=131) 介護保険や国民健康保険、後期高齢者医療保険に関する通知(n=288) その他の通知 (n=18) 以上の通知の種類ごとに以下の回答の構成比を示す すぐに理解できた 理解するのに時間がかかった 理解できなかったので、調べた 理解できなかった その他 (この図表終わり) Bわかりにくい理由は、情報の優先度、多さ、デザイン。通知では内容、具体性など 「広報誌」や「公式ホームページ」におけるわかりにくい理由は、「どの情報が重要かわかりにくい」、「情報が多くてわかりにくい」、「レイアウトやデザインが読みにくい」などが挙げられる【図表2−31】。また、「納税通知」や「各種手当・給付金等に関する通知」、「介護保険や国民健康保険、後期高齢者医療保険に関する通知」では、「内容が難しい」、「例示などがなく具体的でない」などが挙げられる【図表2−32】。 図表2−31 情報媒体別 情報が得にくい理由 [本調査/複数回答] <情報媒体ごとに、情報が得にくい構成比を示す表> 広報誌(148) 公式ホームページ(106) メールマガジン(21) SNS(フェイスブックやツイッターなど)(11) 自治会等の回覧板(123) 防災無線(98) 郵便等による通知(42) その他(2) 以上の媒体ごとに以下の回答の構成比を示す 用語に、専門用語、カタカナ語、略語等が多い 内容が難しい 例示などがなく具体的でない 情報が多くてわかりにくい どの情報が重要かわかりにくい 文章が簡潔でない 命令調や押し付けがましい言い方がある 文字が小さい 色が見にくい レイアウトやデザインが読みにくい その他 ※防災無線の「その他」理由で具体的記述があった 63件(64.3%)中、「音声が不明瞭」「音が小さい」など『聞き取りづらい』が 58件であった。 (この図表終わり) 図表2−32 通知文種類別 理解しにくい理由 [本調査/複数回答] <通知文の種類ごとに、情報が得にくい構成比を示す表> 納税通知(160) 健康診断等に関する通知(92) 各種手当・給付金等に関する通知(105) 子育て支援や小中学校入学に関する通知(32) 介護保険や国民健康保険、後期高齢者医療保険に関する通知(118) 以上の通知の種類ごとに以下の回答の構成比を示す 用語に、専門用語、カタカナ語、略語等が多い 内容が難しい 例示などがなく具体的でない 情報が多くてわかりにくい どの情報が重要かわかりにくい 文章が簡潔でない 命令調や押し付けがましい言い方がある 文字が小さい 色が見にくい レイアウトやデザインが読みにくい その他 (この図表終わり) 4.高齢者・障害者・外国人の情報入手の状況 この節では、情報発信において特に配慮が必要だと考えられる高齢者・障害者・外国人の情報入手の現状と問題点について述べる。この節の内容は、「多摩・島しょ地域の住民へのアンケート」での「同居者別クロス」結果や支援団体等へのヒアリング調査結果、文献調査結果をもとに整理した。 (1)の項では、「多摩・島しょ地域の住民へのアンケート」結果から、高齢者や障害者、外国人等と同居する世帯の情報入手の現状と評価を整理し、わかりにくいと感じている情報の特徴を把握した。 (2)の項では、支援団体等へのヒアリング調査結果や文献調査結果から、高齢者や障害者、外国人等が情報入手の際に直面している問題点等を整理し、配慮すべき事項を把握した。 (1)高齢者・障害者・外国人の情報入手の現状とわかりやすさの評価 @障害者等や外国人と同居する人は、わかりにくいと感じている人の割合が高い 高齢者や障害者、外国人と同居している人は、「広報誌」や「通知書」などの情報を受け取っている割合が高い。次に割合が高いのは、障害者等と同居している人では「役所の窓口での手続き」(32.8%)、「公式ホームページ」(31.8%)、外国人と同居している人では「公式ホームページ」(31.4%)である。わかりにくいと感じている人は、全体が24.6%であるのに対し、高齢者と同居している人は23.9%、障害者等と同居している人は29.1%、外国人と同居している人は30.0%であった【図表2−33】。情報入手数の平均は、全体が 2. 4種類であるのに対し、高齢者と同居している世帯は 2.6種類、障害者等と同居している世帯は 2.6種類、外国人と同居している世帯は 2. 5種類であった【図表2−34】。障害者や外国人等と同居する人は、情報に接する頻度が高いにもかかわらず、わかりにくいと感じている人の割合が高い傾向にある。 図表2−33 同居者別 直近 1年間の入手した情報 [事前調査/複数回答] <同居者ごとに入手した情報の構成比を示す棒グラフ> ( )内はサンプル数 中学生以下の子どもを含む複数の情報弱者と同居している(中学生以下の子どものみを含む)(2,476) 65歳以上の高齢者を含む複数の情報弱者と同居している( 65歳以上の高齢者のみを含む)(2,125) 障害者、要支援・要介護者等を含む複数の情報弱者と同居している(障害者、要支援・要介護者等のみを含む)(881) 外国人を含む複数の情報弱者と同居している(外国人のみを含む)(70) 情報弱者とは同居していない(4,994) 広報誌を読んだ 以上の同居者ごとに以下の回答の構成比を示す あなたや同居者に対する通知書が届いた(給付金通知や納税通知、検診・健康診断通知、選挙など) 公式ホームページを見た 回覧板を見た 役所の窓口で申請手続き等を行った 生活情報冊子を見た(暮らしの便利帳など) 街なかにある情報掲示板で情報を見た メールマガジンやSNSで入手した(防災防犯情報など) その他 最近 1年以内にお住まいの市町村からの情報を見ていない (この図表終わり) 図表2−34 同居者別 直近 1年間の入手した情報の数 [事前調査/単一回答] <同居者ごとに入手した情報の数を示す表> (この図表終わり) Aわかりにくい情報は、税や福祉に関する情報 住民が普段入手している行政情報を分野別にみると、「市民生活に関する情報」や「市町村行政に関する情報」などが多い。中学生以下の子どもと同居している人をみると、「子どもの福祉や保育に関する情報」(69.6%)や「教育に関する情報」の割合が他より高く、高齢者や障害者等と同居している人では、「税や国民健康保険に関する情報」や「福祉に関する情報」が他より高い【図表2−35】。中学生以下の子ども、65歳以上の高齢者、障害者等、外国人と同居している人は、同居していない人に比べて、わかりにくいと感じている人の割合が高い。特に、「税や国民健康保険に関する情報」や「福祉に関する情報」などでわかりにくいと感じている人の割合が高い【図表2−36】。 図表2−35 同居者別 直近 1年間で入手した情報の種類 [本調査/複数回答] <同居者ごとに入手した情報の種類の構成比を示す棒グラフ> ( )内はサンプル数 中学生以下の子どもを含む複数の情報弱者と同居している(中学生以下の子どものみを含む)(247) 65歳以上の高齢者を含む複数の情報弱者と同居している( 65歳以上の高齢者のみを含む)(202) 障害者、要支援・要介護者等を含む複数の情報弱者と同居している(障害者、要支援・要介護者等のみを含む)(116) 外国人を含む複数の情報弱者と同居している(外国人のみを含む)(4) 情報弱者とは同居していない(543) 以上の同居者ごとに以下の回答の構成比を示す 市民生活に関する情報 市町村行政に関する情報 地域行事や生涯学習などに関する情報 防犯や防災に関する情報 保健・健康に関する情報 税や国民健康保険に関する情報 福祉に関する情報 子どもの福祉や保育に関する情報 教育に関する情報 (この図表終わり) 図表2−36 同居者別 各行政情報のわかりにくさ [本調査/単一回答] <行政分野ごとに、情報弱者との同居の有無によるわかりやすさの差を示す表> (この図表終わり) コラム 担当者の気付き【わかりやすい情報発信は誰のため?】 「わかりやすい情報発信への取組」というと、その対象は子ども、高齢者、障害者、外国人など、情報の受け取りに弱点を抱える人を思い浮かべる方は多いのではないでしょうか。彼らに配慮した情報発信を行うことは、わかりやすい情報発信の取組のひとつです。 しかし、情報の受け手に特別なハンデがなくても、相手に『伝えたい』ことを『伝わる』ようにするのは簡単なことではありません。アンケート結果からも、4人に1人がわかりにくいと感じていることがわかりました。つまり、わかりやすい情報発信の取組の対象は、情報を受け取るすべての住民と考えていいと思います。さらには、友人や家族などプライベートで接する人に対しても、誤解のないようにわかりやすく伝えることが大切です。 このように、「わかりやすい情報発信への取組」は、情報を発信するすべての場面で重要な意味があります。「わかりやすい情報発信」に取り組むことは、業務だけでなく日常生活でも生かせる取組ではないでしょうか。 (コラム終わり) (2)高齢者・障害者・外国人が情報入手の際に直面している問題点 @高齢者は文字の大きさだけでなく、行間や色使いなど「文書の見た目」によってわかりにくいと感じる 高齢者は加齢に伴い、一般的に視力や色覚機能が低下する。小さい文字が見えにくくなることに加え、行間が狭いと読みづらいと感じる。また、黄系や青系の感度が鈍くなり、コントラストに対する感度も低下する。 このように、高齢者向けの文書では、文字の大きさだけでなく、行間や色使いなどへの配慮が求められている。 A障害者は障害の種類と程度により、一人ひとり状況が異なる 視覚障害者は、全盲や弱視などにより、情報入手に不自由を感じている。文字による情報入手が困難であるため、自治体側は音声化や点字化などの対策を講じた情報発信を行う。しかし、視覚障害者のうち点字習得者は1割強(厚生労働省「平成 18年身体障害児・者実態調査結果」(注1))であり、点字を読めない人の方が多い。その理由のひとつとして、事故や病気、加齢等で視力が低下し障害者となる場合が多く、その場合は点字の習得が困難であることが挙げられる。また、色覚障害もタイプによって感度や見え方が異なる。このように、視覚障害者に配慮すべき事項は一律ではなく、人により様々である。 ただ、技術の進歩に伴い、視覚障害者の情報入手をサポートする仕組みは構築されつつある。タブレットやパソコンを用いれば文字を拡大することもできるし、自動で音声化や点字化する機器もある。情報を発信する側からテキストデータを提供することで、情報の受け手自身が、自身の状況や利用している用具に合わせてデータを活用できる。 注1 厚生労働省『平成18年身体障害児・者実態調査結果』、2008(平成20年)3月 <http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/shintai/06/dl/01.pdf>2017年1月13日確認 (注終わり) 聴覚障害者は、難聴や失聴などにより、音声による情報入手に不自由を感じている。情報の発信側は、文書による情報入手には問題がないと考え、手話による対策のみを講じる場合が多い。しかし、聴覚障害者のうち手話をコミュニケーション手段として活用している人は2割弱(前述の厚生労働省調査)であり、手話を理解できる人は少ない。従って、手話が理解できない聴覚障害者に対しては、文字による情報発信のわかりやすさは益々重要となる。 一方、手話が理解できる人にとっても、文書における情報発信のわかりやすさは重要である。なぜなら、手話は日本語とは異なる言語体系で作られているからである。自治体によっては、手話をひとつの言語として扱う手話言語条例を制定するところも増えてきた。長年手話でコミュニケーションしていると、日本語の文章であっても理解が難しい場合がある。実際、日本語の通知文に手話通訳が必要となる場合も多い。 そのため、聴覚障害者への情報発信における配慮としては、手話での提供だけでなく、文書そのもののわかりやすさを重視することが必要である。 知的障害者や知的障害児の多くは、複雑な表現や難しい漢字、抽象的表現などの理解が困難である。そのため、漢字にふりがなを振ったり、平仮名で記載したりといった対策を講じて情報発信を行う。しかし、単にふりがなを振ったり平仮名で記載したりするだけでは、文書自体が難しい場合や、単語の意味そのものの理解が難しい場合など、知的障害者らが、受け取った情報を自力で理解することは難しい。多くの場合は、保護者や支援員らが分かりやすく言い換えて説明したり、「絵カード」等を活用したりして、知的障害者らに情報を伝えている。従って、知的障害者が保護者等の支援を受けずに、自ら情報を得ることができるよ う、平易な単語や表現を用いたわかりやすい文書での情報が求められている。 取組例として、内閣府の「障害者差別解消法リーフレット(わかりやすい版)」が挙げられる。この「わかりやすい版」は、単語や表現を平易にし、図やイラストを活用しているもので、通常のリーフレットと併せて公開されている。この内閣府の取組のように、通常の文書に併せて「わかりやすい版」を作成することも有効である。なおこの取組は、前述のとおり聴覚障害者にとっても有効である。 このように障害者は、一言で障害者と言っても、障害種別の違いだけでなく、障害の程度の違い、それぞれの状況や利用している用具等によっても、必要としている支援や情報の受け取り方が異なる。そのため、それらに応じた情報提供が必要である。また、自治体が発行する障害福祉に関するサービスを掲載した資料でさえも、様々な対象者に関する情報が一冊にまとめてあることが多く、自分に必要なサービス情報を探すことに苦労するという意見もある。その人がどんな状況にあり、どんな支援を必要としているかは、支援する側が想像しきれない部分も多く、全てを想像することは困難である。だからこそ、情報の受け手に情報 弱者が含まれる可能性があれば、テキストデータや「わかりやすい版」のような、多様な媒体による情報提供が有効となる。 B外国人には「多言語化」よりも平易な日本語のほうが伝わりやすい場合がある 現在日本に住む在留外国人は、約 230万人 (注2)(2016(平成 28)年6月)、多摩・島しょ地域の外国人住民の人口は約7万5千人(注3)(2016(平成28)年10月)であり、その国籍や言語は多岐にわたる。しかし、自治体による多言語対応は、英語、中国語、ハングル、スペイン語などにとどまり、すべての言語に対応した情報発信には限界がある。ただ、母語以外では英語よりも平易な日本語の方が理解できるという外国人も多い。 また、外国人住民は、「暮らしの情報」や「事故や火事の情報」、「災害時の情報」などの情報を必要としている。しかし前述のとおり、多言語化のみでは限界があるため、必要とする情報の内容が伝わらず、災害時に避難ができなかったり、適切なゴミ出しができずに近隣住民同士のトラブルが発生したりする場合もある。 注2 法務省『平成28年6月末における在留外国人数について(確定値)』2016(平成28)年9月27日報道発表 <http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyuukokukanri04_00060.html> 2017年2月15日確認 注3 東京都総務局統計部『外国人人口 平成28年』、2016(平成28)年10月 <http://www.toukei.metro.tokyo.jp/gaikoku/2016/ga16010000.htm> l2017年2月15日確認 (注終わり) 以上のことから、外国人住民に向けては、多言語対応のひとつとして、平易な日本語表現による情報発信も求められている。 このとき外国人は、例えば二重否定や尊敬語・謙譲語、構造が複雑な文章などを難しいと感じる。また、母語が漢字圏か非漢字圏かによっても文章の理解度が異なる。日本語の言葉の背景にある文化が、母語にない概念や異なる文化であった場合、さらに理解が難しい。外国人住民に対しては、文化の違いを考慮しながら、できるだけ平易な日本語で表現することが求められている。 ただ、平易な表現といったとき、その平易な単語が辞書で引きやすいかどうかに留意する必要がある。例えば、「注意する」を「気を付ける」と言い換え、平易に表現したつもりが、その単語の意味を知りたい外国人が辞書を引こうとしてもかえってうまく調べられないということがある。この場合、「注意する」という表現したほうが、辞書で調べやすくなる。 小学 1年生の教科書に載っているような単語のほうが、外国人にとってはこのような難しさがあるという意見も聞かれた。 これらのことから、外国人に向けた平易な表現とは、子ども向けとは異なることも忘れてはならない。母語、文化、日本語の習熟度等、様々である人々に、一律の基準で対応しようとすること自体、無理があると考えるのが現実的である。 C支援の必要度合いで配慮すべき事項を整理する このように、「情報の受け取りに弱点を抱える人」の状況は一人ひとり異なる。障害者や外国人については前述のとおりであり、高齢者も同様であるし、状況も変化していく。この多様さゆえ、情報発信において配慮すべき事項も多様ということになる。 通常、情報の受け取りに弱点を抱える人への配慮事項は、障害者や高齢者、外国人などの「属性」ごとに考えがちである。しかし、この属性別に情報発信媒体を準備することは、費用や人員体制の面からも難しい。したがって、情報発信の対象者が必要としている支援の内容や度合で考えることで、より汎用性の高い配慮をすることができる。その一つとして、高齢者・障害者・外国人への情報提供の問題点をみると、配慮すべき事項に共通する部分があることに気づく。例えば文字を大きくし、行間を空けることは、高齢者だけでなく、視覚障害者や知的障害者、在日歴の長い外国人住民にとっても効果的である。また、平易な表現や漢字のふりがなは、外国人住民だけでなく、子どもや知的障害者、聴覚障害者にとっても効果的である。 このように、高齢者・障害者・外国人に対してわかりやすい情報を発信するためには、「属性」別に情報発信を考えるのではなく、必要な支援の種類と度合いに応じて配慮すべき事項を整理することが求められる。ただし、漢字にふりがなを振ることは高齢者にとって煩雑で見づらさにつながる場合があるなど、配慮すべき内容は相手により相反する場合があるので、その点を十分考慮する必要がある。 5.多摩・島しょ地域におけるわかりやすい情報発信の問題点 この節では、本章の2節から4節で把握した現状をもとに、1節の「わかりやすい情報発信の必要性」に照らし、多摩・島しょ地域の自治体がわかりやすい情報発信に取り組むにあたっての問題点を6つに整理する。 (1)行政分野の違いによる取り組みにくさの差 自治体の取組状況と住民の評価を比べると、「市民生活に関する分野」「保健・健康に関する分野」「子どもの福祉や保育に関する分野」などは、自治体の取組も積極的であり住民の評価も高い。一方で、「税や国民健康保険に関する分野」や「福祉に関する分野」などは、自治体の取組に限界もあり住民の評価も低い【図表2−37】。 住民生活に身近で具体的、イメージのわきやすいような情報を発信する分野においては、自治体は比較的取り組みやすく、住民評価も高い。一方で、制度が複雑な分野や専門性の高い分野においては、他分野に比べて取組が難しく、住民もわかりにくいと感じている。行政分野の違いによる取り組みにくさの差が、住民の評価にも違いを生じさせている。取り組みにくい分野があるということは、自治体がわかりやすい情報発信に取り組むにあたってのひとつの問題点である。 図表2−37 行政の取り組み状況と住民の評価 <行政の取組状況と住民の評価を対比させたグラフ> ※「各部署」と「本調査」の結果を合成して作成 縦軸:住民による行政情報のわかりやすさへの評価 横軸:行政のわかりやすい情報発信への取組の状況 (この図表終わり) (2)職員の取組意欲を高めることの難しさ 各部署においてわかりやすい情報発信に努める一番の理由は、「住民等からの問い合わせが多いから」が4割弱であった( p.22、図表2−7)。住民からの要望のような外的要因は、職員の取組意欲を高めるきっかけになることがわかる。 しかし、アンケートの自由回答によれば、職員は、「全職員の意識付けを継続的に行う必要がある」、「伝わりやすい情報発信の重要性を職員一人ひとりが意識する必要がある」などといった課題を抱えている。これらの意見からは、取組の必要性を感じていない職員の存在が読み取れる。職員間の意識の差により、意欲の高い職員が取組を広げることが難しい場合があると思われる。これは、取組の緊急性の低さや重要性の認識の差など、内的要因による理由もあるのだと考えられる。 このように、取組のきっかけとなり得る外的要因がありながらも、取組を進めにくい内的要因がある状況において、職員の取組意欲を高めていくことは容易なことではない。わかりやすい情報発信に取り組むにあたっては、職員の取組意欲を高めることの難しさが問題点として挙げられる。 (3)受け手の違いによるわかりやすさの評価の差 全体では、自治体からの情報に接する頻度が高い人のほうが、わかりやすいと感じている傾向が見られたが、一方で、障害者等や外国人と同居する世帯は、情報に接する頻度が比較的多いにも関わらず、わかりにくいと感じている人が多い傾向にあった。また、若い人ほどわかりにくいと感じており、特に 30歳代に向けた子育てに関する情報はわかりやすく伝わっていない傾向にあった。 このように、情報に接する頻度や受け手の立場、情報の内容など、受け手の状況により何をわかりやすいと感じるかは異なる。対象を限定せず多様な人に情報を発信する場合、すべての人にわかりやすいと感じてもらうことは難しい。わかりやすい情報発信を目指すにあたっては、受け手の立場によって何がわかりやいか(わかりにくいか)、すなわちわかりやすさの評価が異なることが問題点といえる。 (4)行政情報の表現方法の難しさ 自治体職員は、文章を作成する際に「文章を簡潔にする」、「情報を整理・選択する」など情報量の削減や、「難しい制度等の内容を平易な表現に改める」、「専門用語、カタカナ語、略語等を避ける」など行政用語の書き換えに取り組んだり、「読みやすいレイアウトやデザインを工夫する」など見やすいデザインに努めたりしている(p.25、図表2−11)。その一方で、「情報の取捨選択が難しい」、「法律用語や専門用語をわかりやすく表現できない」などといった課題も抱えている。他方、住民は、「どの情報が重要かわかりにくい」、「情報が多くてわかりにくい」など文章量の多さや、「レイアウトやデザインが読みにくい」 など見た目によるわかりにくさを感じている。この自治体と住民の回答を対比させたのが、【図表2−38】である。 職員がわかりやすい情報発信に努めているにもかかわらず住民の評価が得られていないのは、情報の整理やレイアウトの工夫がまだ不足しているのではないかと考えられる。しかしそれに加え、専門用語をわかりやすく表現できないことや、法律用語を使わざるを得ないことなど、わかりやすさに向けた取組に一定の限界があることが原因として考えられる。行政情報自体、わかりやすく伝えることが難しいということが問題点といえる。 図表2−38 自治体職員の取組と住民の評価の比較 <行政の「取組内容」と住民の「わかりにくい理由」の対比の表> ※「具体例」と「本調査」の結果を合成して作成 (この図表終わり) (5)統一的な基準づくりの難しさ 各部署におけるわかりやすい情報発信の取組内容は、「部署内での指導や教育」(45.7%)のほか、「文章作成のマニュアル等の整備」(28.8%)や「他地域や他分野のマニュアル等を参考にする」(25.8%)などが挙げられており(p.20、図表2−5)、わかりやすい表現のための基準が求められていることがわかる。しかし、全庁的な基準づくりに対しては、「発信する内容が様々であり、全庁的な基準の設定が困難」、「対象者によって表現方法が異なるため、統一した基準を設けることが難しい」などといった課題も抱えていることが、アンケートの自由回答から読み取れる。 このように、ある程度の基準が必要であるものの、統一的な基準を作成するのが技術的に難しいことが問題点である。 (6)中心となって取り組む体制や人材の問題 わかりやすい情報発信に全庁的な基準をもって取り組んでいる自治体は1/3の 13市町村にすぎない(p.17、図表2−1)。全庁的な取組になっていない市町村では、「それぞれの部署で工夫している」、「各課の判断に任せている」など、各部署に任せているケースも多い。一方各部署においては、「全庁の基本的方針や統一的な基準にそって取り組んでいる」部署が 5割弱であり、そのほかは「各担当者が独自に工夫して取り組んでいる」など、部署としての取組というよりは担当者が工夫して取り組んでいることが読み取れる(p.17、図表2−2)。 アンケートの自由回答によると、全庁的に取り組めない理由としては、「取り組む部署がない」、「マンパワー不足で全庁的取組に至るまでの余力がない」など、庁内体制が整っていないことが挙げられた。一方で各部署の側からは、「全庁統一的に取り組むべき事項であるため」などの理由で取り組んでいない部署があった。 このように、全庁的な取組の中心になりうる部署と情報発信を行う個々の部署で、取組に対する意識の違いがあり、取組を組織横断的に展開できないことが問題点である。